アルファタウリ・AT01

スクーデリア・アルファタウリAT01：2020年シーズンの軌跡

2020年のF1世界選手権を戦ったスクーデリア・アルファタウリのマシン、AT01。前年まで「スクーデリア・トロ・ロッソ」として活動していたチームは、名称変更とともに新たな挑戦をスタートさせました。本稿では、AT01の開発からシーズン成績、そしてマシンの詳細なスペックまでを網羅的に解説します。

開発とデザイン

AT01は、2020年2月14日、レッドブル・グループが保有する「ハンガー7」にて公開されました。翌日にイタリアのミサノ・サーキットでシェイクダウンを行い、シーズン開幕に向けて準備を進めました。テクニカルディレクターのジョディ・エギントンが製造責任者を務めました。

チーム名の変更に伴い、カラーリングはアルファタウリのブランドカラーである白とダークネイビーを基調としたデザインに一新されました。ホンダ製パワーユニットのロゴが赤でアクセントとして配置され、このカラーリングはFIA公式F1.comのファン投票で「ベスト・カラーリング賞」に選ばれる人気を博しました。

シャシー、ギアボックス、油圧システムといった主要コンポーネントはレッドブル・テクノロジーから供給されましたが、空力特性に影響を与えるフロントウィングやフロントサスペンションは、姉妹チームであるレッドブルのRB16とは異なる設計が採用されています。特にフロントウィングは、外側に向けて気流を導くアウトウォッシュコンセプトを取り入れている点が大きな特徴です。

2020年シーズンの戦績

ドライバーはピエール・ガスリーとダニール・クビアトのコンビが継続しました。プレシーズンテストは順調に推移したものの、新型コロナウイルスのパンデミックの影響でF1シーズンは一時中断を余儀なくされました。

中断明けに再開されたシーズンでは、ガスリーとクビアトともに好成績を残しました。ガスリーは開幕戦オーストリアGPで、クビアトは第2戦シュタイアーマルクGPで今季初入賞を果たしました。

ガスリーはシーズンを通して安定したパフォーマンスを披露し、計10回入賞。特に第13戦エミリア・ロマーニャGPでは4番手グリッドを獲得するなど、予選でも好成績を残しました。しかし決勝ではマシントラブルによりリタイアしています。

クビアトは7回の入賞を記録しましたが、予選では苦戦が続きました。タイヤバーストや戦略ミスなどの不運に見舞われることもありました。しかし、第13戦では4位入賞とシーズン最高位を獲得、予選でも好成績を残すなど、終盤にかけて巻き返しました。

そして、第8戦イタリアGPでは、アルファタウリにとって歴史的な瞬間が訪れます。ガスリーが、中団からスタートしながらも、セーフティーカーや赤旗中断を巧みに利用し、見事優勝を掴みました。これは、チームにとって初優勝であり、ファエンツァのチームとしては2008年以来の勝利となりました。クビアトも9位入賞とチーム初のダブル入賞も達成しました。

シーズン全体ではコンストラクターズランキング7位と前年を下回りましたが、イタリアGPでの優勝や100ポイント超えを達成するなど、大きな成功を収めました。

AT01のスペック

以下にAT01の主要スペックを示します。

シャシー
名称：AT01
シャシー構造：スクーデリア・アルファタウリ カーボンコンポジットモノコック
サスペンション（フロント）：スクーデリア・アルファタウリ/レッドブル・テクノロジー
サスペンション（リア）：レッドブル・テクノロジー
ブレーキダクト：スクーデリア・アルファタウリ
ステアリング：スクーデリア・アルファタウリ/レッドブル・テクノロジー
ギアボックス：レッドブル・テクノロジー
ディファレンシャル：油圧、マルチプレート
クラッチ：油圧、カーボンマルチプレート
ブレーキシステム：スクーデリア・アルファタウリ/レッドブル・テクノロジー
ドライバーズシート：スクーデリア・アルファタウリ
タイヤ：ピレリ
燃料システム：スクーデリア・アルファタウリ/レッドブル・テクノロジー
重量：746kg

パワーユニット（ホンダ RA620H）
気筒数：V型6気筒
排気量：1,600cc
最高回転数：15,000rpm
バルブ数：24
バンク角：90度
エンジンマネージメント：ホンダ
オイル：モービル1
重量：145kg

AT01は、チームにとって大きな転換期を象徴するマシンであり、そのパフォーマンスはチームの成長を物語っています。ガスリー選手の初優勝は、チームの歴史に刻まれた重要な出来事と言えるでしょう。

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