アルファロメオ・アルファ6

アルファロメオ アルファ6：高級セダンとしての挑戦と苦悩

アルファロメオ アルファ6は、1979年から1985年にかけてイタリアの自動車メーカー、アルファロメオが生産した大型高級乗用車です。その歴史は、開発の遅延や時代背景との複雑な関係によって彩られています。

アルフェッタをルーツに、高級セダンを目指して

アルファ6のベースとなったのは、アルファロメオ アルフェッタという中型車です。ドアパネルなどの部品を共用し、サスペンションも共通化することで開発コストを抑えつつ高級セダンを目指しました。しかし、アルフェッタと多くの部品を共有した結果、車格の割に車幅が狭く、ややアンバランスなスタイルになってしまいました。

その背景には、アルファ6の開発経緯があります。当初は1969年に生産中止となったアルファロメオ2600の後継車として、アルフェッタに先行して開発がスタートしました。しかし、開発期間が長期化し、1973年の第一次オイルショックに見舞われました。結果として、アルフェッタよりも7年も遅れての市場投入を余儀なくされたのです。そのため、発売時点ですでにデザインが時代遅れに見えてしまうという、大きなハンデを背負うことになったのです。

にもかかわらず、アルファ6の空力性能は優れていました。Cd値は0.41という、当時の高級車としては優秀な数値を達成しています。また、アルファロメオとしては異例と言えるほど充実した装備も魅力でした。パワーステアリング、集中ドアロック、電動ミラー、リミテッドスリップデフといった装備に加え、衝突時の燃料自動カットオフ機構も標準装備されていたのです。

新設計V型6気筒エンジン：アルファロメオの歴史を彩る傑作

アルファ6の最大の特徴は、新設計のV型6気筒SOHCエンジンの搭載です。このエンジンはアルファ6で初めて市販化され、その後のアルファロメオの様々な車種、そしてフィアット系列のランチア車にも搭載されるなど、長きに渡って活躍しました。

初期モデルでは、2500cc、158馬力を発揮する6キャブレター仕様でした。キャブレターの調整が難しいという欠点もありましたが、その後改良が加えられ、1983年のマイナーチェンジではボッシュLジェトロニック燃料噴射システムが採用され、信頼性と扱いやすさが向上しました。さらに、イタリア国内向けには2000ccキャブレターエンジン、そしてVMモトーリ製2500cc 5気筒ターボディーゼルエンジンもラインアップに加わりました。

マイナーチェンジと生産終了

1983年にはマイナーチェンジが行われ、ヘッドライトが角型2灯式に変更され、内外装のデザインも刷新されました。しかし、時代の流れには逆らえず、1985年には後継車であるアルファロメオ90に世代交代し、生産を終了しました。総生産台数は12,070台にとどまり、商業的には成功作とは言い難い結果となりました。

日本にはデビュー直後に数台が輸入されたものの、広く普及することはありませんでした。

結論：時代を先取りできなかった挑戦

アルファ6は、新しいV型6気筒エンジンを搭載し、充実した装備を持つ魅力的な高級車でした。しかし、開発の遅延やオイルショックといった時代の波に翻弄され、発売時期が遅れたことが大きな痛手となりました。結果として商業的には成功しませんでしたが、アルファロメオの歴史において、革新的なエンジンを搭載した重要なモデルとして記憶されています。

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