アルファロメオ・カラボ

アルファロメオ・カラボ：未来を予感させたコンセプトカー

1968年10月、パリモーターショーで発表されたアルファロメオ・カラボは、自動車デザインの歴史に輝くコンセプトカーです。カロッツェリア・ベルトーネが製作、当時ベルトーネのチーフスタイリストだったマルチェロ・ガンディーニがデザインを手掛けました。その独特のスタイルと革新的な技術は、後世のスーパーカーにも大きな影響を与えています。

ベース車両と開発経緯

カラボのベースは、アルファロメオ・ティーポ33/2ストラダーレのシャシ。ミッドシップレイアウトに2.0L V8エンジンを搭載したこのモデルは、わずか18台しか生産されませんでしたが、そのポテンシャルは高く評価されていました。アルファロメオは、カロッツェリア各社に協力を依頼し、ベルトーネはその呼びかけに応え、カラボを誕生させました。このプロジェクトは、ベルトーネとガンディーニにとって、後の名車デザインへの重要なステップとなりました。ガンディーニは、カラボのデザインで培った経験を活かし、ランチア・ストラトスHFゼロやランボルギーニ・カウンタックといった名車を世に送り出していきます。

デザインとメカニズム

カラボのデザインは、1960年代後半に流行したウェッジシェイプをさらに進化させたものです。低く構えたボディは、高速走行時のフロントエンドのリフトを抑制する効果も兼ね備えていました。これは、ガンディーニが高速走行時の空力特性を重視した結果であり、後のスーパーカーデザインの先駆けともいえます。

特徴的なのは、なんといってもシザードア。垂直に開閉するこのドアは、当時としては画期的で、カラボの個性的なスタイルを際立たせています。ボディカラーには、メタリックグリーンとオレンジ、そして蛍光グリーンが用いられ、まるで昆虫の羽を思わせる鮮やかさで、多くの人の目を奪いました。このカラーリングは、イタリア語で「オサムシ」を意味するCaraboという車名と深く関わっています。フロントバンパーのオレンジとリアエンドの蛍光グリーンは、視認性向上も考慮した安全設計でもあります。

パワートレインは、アルファロメオ製の2.0L V8エンジン。最高出力は233PS、最高速度は250km/hに達しました。6速トランスアクスルギアボックスとの組み合わせにより、優れた加速性能も実現しています。ただし、後年、エンジンはアルファロメオ・モントリオールのV8エンジンに換装されました。

インテリアはシンプルながらも機能的です。300km/hのスピードメーターと10,000rpmのタコメーターが目を引き、2本スポークのステアリングホイールも特徴的です。当初はビニールレザー張りでしたが、後にアルカンターラに変更されています。

カラボのその後

世界各地で展示された後、カラボはコレクターの手に渡った時期もありましたが、現在はアルファロメオ歴史博物館で大切に保管されています。1989年には、アルファロメオとベルトーネによってレストアも実施されました。カラボは、単なるコンセプトカーとしてだけでなく、自動車デザインの歴史に大きな足跡を残した一台と言えるでしょう。

レプリカ

カラボのレプリカも存在します。著名な自動車デザイナー、チップ・フースの父サム・フースが、デ・トマソ・パンテーラのプラットフォームを流用して製作したロードスタータイプのレプリカは、リアリティ番組「オーバーホール」でも紹介され話題となりました。また、VWビートルのエンジンとシャシーを用いたキットカー、FiberFab Aztec 7もカラボのデザインに影響を受けています。

まとめ

アルファロメオ・カラボは、その独創的なデザインと高い性能、そして自動車史における影響力から、今でも多くのファンを魅了する名車です。ウェッジシェイプの先駆けとして、そして後のスーパーカーデザインに多大な影響を与えた革新的な一台として、その存在は高く評価されています。

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