アルファロメオ・185T

アルファロメオ・185T：1985年シーズンの影に潜む悲劇のF1マシン

1985年、アルファロメオは前年型184Tの後継機として、185Tを開発・投入しました。設計はジョン・ジェントリーの手によるものでした。しかし、この185Tは期待を大きく裏切る、アルファロメオの歴史に暗い影を落とす一台となりました。

開発のコンセプトは、前年型184Tの弱点であった完走性の向上でした。184Tはそれなりの速さを持っていたものの、信頼性の低さが足を引っ張っていました。しかし、185Tは完走性どころか、前年型を下回るスピードしか持ち合わせていなかったのです。開幕戦から投入されたものの、トラブルによるリタイヤが相次ぎ、最高位は9位どまりという結果に終わりました。

特にモナコグランプリでは、エディ・チーバーが予選で4位を獲得するなど、速さの片鱗を見せました。しかし、決勝レースではエンジントラブルに見舞われ、完走すらできませんでした。リカルド・パトレーゼも同様の苦戦を強いられ、チームはシーズン序盤で185Tの戦闘力の低さを悟り、第9戦以降は前年型184Tに回帰せざるを得ませんでした。

185Tは、ドライバーたちに大きな精神的負担を与えました。パトレーゼは後に、185Tは「あまりにひどい状況で、グランプリ期間中を全く楽しめなくなっていた。レースを辞めようかと考えたつらい時期だった」と語っています。双子の娘の誕生が、F1ドライバーとしてのキャリア継続の支えになったとも告白しており、185Tが彼の精神を追い詰めていたことが伺えます。チーバーも185Tの不振の影響を受け、アルファロメオのF1撤退後、1987年までF1レギュラーシートを失うことになりました。

185Tのスペックは、シャーシに『185T』、タイヤにグッドイヤーを採用。エンジンは、アルファロメオ製のV型8気筒ターボエンジン『890T』を搭載しました。排気量は1,497cc、燃料と潤滑油はアジップが提供しました。

結局、185Tはわずか8戦の出場に終わりました。その戦闘力の低さは、チームのF1撤退にも影響を与えた可能性があります。速さだけを追い求めた結果、信頼性を犠牲にした苦い教訓が、このマシンには凝縮されていると言えるでしょう。チームやドライバーたちの証言から、185Tが単なる失敗作ではなく、多くの関係者に深い傷跡を残した問題作だったことがわかります。このマシンの開発、そしてその運用過程には、多くの反省点が残されたと言えるでしょう。185Tという名は、F1の歴史において、成功とは程遠い、忘れられない失敗例として刻み込まれることとなりました。

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