アルブレヒト・フォン・エスターライヒ＝テシェン (1897-1955)

アルブレヒト・フォン・エスターライヒ＝テシェン：激動の時代を生きた皇族

アルブレヒト（2世）・フォン・エスターライヒ＝テシェン（1897年7月24日 - 1955年7月23日）は、ハプスブルク＝ロートリンゲン家テシェン公爵家最後の当主です。オーストリア＝ハンガリー帝国の皇族、軍人であり、戦間期にはハンガリー王国の大地主、政治家として活躍しました。ハンガリー国会上院議員も務めた、激動の時代を生きた人物です。

生涯

二重帝国時代

1897年、アルブレヒトはフリードリヒ大公とイザベラ・フォン・クロイ公爵令嬢の間に、待望の長男としてウィーン郊外で誕生しました。洗礼名はアルブレヒト・フランツ・ヨーゼフ・カール・フリードリヒ・ゲオルク・フーベルト・マリア。この名は、莫大な遺産を相続した大伯父アルブレヒト（1世）大公にちなんでいます。一家はハプスブルク家の中で最も裕福であり、アルブレヒトの誕生を祝って奉献聖堂が建立されたほどです。

一家はプレスブルクのグラッシャルコヴィチ宮殿を借りていましたが、アルブレヒト誕生の年に宮殿を購入。ここは一家の住まいとなり、多くの子供たちが育ちました。アルブレヒトは、野心的な母イザベラによって軍人として教育され、父フリードリヒ大公のように陸軍元帥、そして二重帝国陸軍の最高司令官になることを期待されました。

軍人としての教育を終えたアルブレヒトは、1916年に見習士官として第一次世界大戦に従軍。陸軍少尉、陸軍中尉と昇進を重ね、2年間前線で戦いました。

戦間期

二重帝国が崩壊すると、大公一家の財産と所領は、チェコスロバキアとオーストリア政府によって没収されました。一家はやむなく、残されたウンガリッシュ・アルテンブルクの所領があるハンガリーへ移住しました。

アルブレヒトは軍人の道を諦め、ウンガリッシュ・アルテンブルク高等農学校で農学を学びました。プレスブルクで育ち、ハンガリー人学校に通っていた彼は、自身をハンガリー人と認識しており、母方のクロイ家を通じてアールパード王朝の血を引いていることを誇りにしていました。

1945年までウンガリッシュ・アルテンブルクで大地主として生活。ハンガリー・ソヴィエト共和国崩壊後、政治に関わるようになります。彼の主な関心事は、トリアノン条約の修正でした。領土がハンガリーに復帰することで、没収された財産を取り戻せるかもしれないと考えていたからです。また、母イザベラの発案により、1923年からハンガリーの王位請求者として活動しましたが、1931年に元皇太子オットー・フォン・ハプスブルクの抗議を受けて取り下げました。戦間期のハンガリー国会では、上院議員の議席を与えられています。

第二次世界大戦期から戦後

アドルフ・ヒトラーがドイツで政権を獲得すると、アルブレヒトはドイツの右翼主義がハンガリーを右傾化させることを期待しました。1940年には、イムレーディ・ベーラの設立した反ユダヤ的なハンガリー再生党に所属。また、第二次ウィーン裁定によってトランシルヴァニアがハンガリーに帰属すると、進駐軍に陸軍大佐として参加しました。

第二次世界大戦中、アルブレヒトはブダペストで生活し、1944年に矢十字党が政権を掌握した後も、それに異を唱えませんでした。彼はナチ党の情報提供者であり、ハンガリー国内の親ナチス勢力を糾合する任務に従事していたからです。しかし、1944年末に赤軍が迫ると国外へ脱出。オーストリア、スペインを経て、アルゼンチンに落ち着きました。1955年、ブエノスアイレスで亡くなり、遺体はオーストリア・ブルゲンラント州ハルプトゥルンの小教区聖堂に安置されました。

私生活

アルブレヒトは生涯に3度結婚しましたが、全ての婚姻がハプスブルク家家内法の定める身分基準を満たさなかったため、テシェン公爵家の血統上の正統後継者は彼の代で途絶えました。

最初の妻はレルバッハ・イレーン・ドーラ。1930年に結婚しましたが、1937年に離婚しました。2度目の妻はボチカイ・カタリン・ユリアンナ。1938年に結婚し、2人の娘をもうけましたが、1951年に離婚しました。3度目の妻はリディア・ゲオルギーナ・シュトラウス＝デアナー。1951年に結婚しました。

アルブレヒトは激動の時代に翻弄されながらも、自身の信念に基づき行動しました。その生涯は、時代の変化と個人の運命が交錯する様子を色濃く映し出しています。

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