ブルゲンラント州

ブルゲンラント州：オーストリア東部の歴史と自然が織りなす魅力

オーストリア東端に位置するブルゲンラント州は、穏やかな丘陵と広大な平原が広がる、歴史と自然の宝庫です。ハンガリーとの国境にあり、その歴史は複雑で興味深いものとなっています。1921年、サン＝ジェルマン条約とトリアノン条約に基づき、ハンガリー王国からオーストリアに割譲された土地を基に成立しました。州都はアイゼンシュタットです。

「城の州」ブルゲンラントの名前の由来

州名である「ブルゲンラント (Burgenland)」はドイツ語で「城の州」を意味します。ハンガリー王国支配下の4つの郡（ポジョニ、モション、ショプロン、ヴァシュ）のドイツ語名に由来する「フィーアブルゲンラント (Vierburgenland、4つの城の州)」が、その起源です。プレスブルク（現在のブラチスラヴァ）がチェコスロバキア領となったため「4つの」は省略されましたが、この地域には歴史的に多くの城が築かれ、東方からの侵入を防いできたことから、州名としてふさわしいとされました。ハンガリー語ではドイツ語名が使われますが、Várvidék（城の地方）や、地域にあった言語島に由来するŐrvidékなどの名称も存在します。

地理：平原と湖の景観

ブルゲンラント州は南北に細長く、東西の幅は最も狭いところでわずか5kmしかありません。西側はニーダーエスターライヒ州、シュタイアーマルク州と接し、東側はスロバキア、ハンガリー、スロベニアと国境を接しています。パンノニア平原の一部にあたり、全域が平坦な地形です。農業が盛んで、特にワイン生産が有名です。

ハンガリーとの国境には、ノイジードラー湖（ハンガリー名：フェルテー湖）があります。流出河川を持たないヨーロッパでも珍しい湖の一つであり、2001年には「フェルテー湖/ノイジードラー湖の文化的景観」としてユネスコ世界遺産に登録されました。この湖は、ブルゲンラント州の自然景観を象徴する存在となっています。

歴史：ローマ時代から現代まで

この地域の居住の歴史は古く、石器時代にまで遡ります。紀元前後にはローマ帝国に征服され、パンノニア属州の一部となりました。その後、フン族、ゲルマン人、アヴァール人、そしてマジャル人の支配を受けました。1043年、神聖ローマ皇帝とハンガリー王との間で結ばれた和約により、ライタ川が国境となり、以後1920年まで、現在のブルゲンラント州にあたる地域はハンガリー王国の領土となりました。

中世以降はドイツからの移民が続き、16世紀以降は宗教的迫害を逃れたプロテスタントも移住してきたため、ハンガリー領でありながらドイツ語話者が多くを占めました。1910年の国勢調査では、住民の74％がドイツ語話者でした。

第一次世界大戦後、オーストリア＝ハンガリー帝国が解体すると、オーストリアがブルゲンラント地域の領有を主張しましたが、ハンガリーとの間で紛争が勃発。1921年の住民投票を経て、一部地域がハンガリーに残留したものの、大部分がオーストリアのブルゲンラント州となりました。

ナチス・ドイツによるオーストリア併合（アンシュルス）後、ブルゲンラント州は分割統治されましたが、第二次世界大戦後、再びオーストリア領となり、冷戦の最前線となりました。1989年、オーストリアとハンガリーの外相が国境の有刺鉄線を切る象徴的な出来事が、ベルリンの壁崩壊へとつながりました。

政治：地方行政と州議会

ブルゲンラント州議会は36議席で、任期は5年です。2003年には選挙権年齢が16歳に引き下げられました。州は7つの郡と171の基礎自治体に分かれています。アイゼンシュタットとルストは、郡に属さない憲章都市です。

シンボル：紋章と州旗

ブルゲンラント州の紋章は1922年に制定され、かつてこの地域の領主であったMattersdorf-Forchtenstein伯とギュッシング伯の紋章を組み合わせたものです。州旗は赤と金の横縞の二色旗で、1971年に制定されました。

まとめ

ブルゲンラント州は、歴史、地理、文化が織りなす魅力に満ちた州です。穏やかな自然と歴史的な建造物、そして世界遺産の湖など、見どころ満載のこの地域を訪れてみてはいかがでしょうか。

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