アルメニア地震 (1988年)

アルメニア地震

アルメニア地震は、1988年12月7日に旧ソビエト連邦構成国であったアルメニア・ソビエト社会主義共和国北部で発生した大規模な地震です。

[震源]]はロリ地方のスピタク付近と推定されており、マグニチュードは表面波マグニチュード]で6.8、あるいはローカル[マグニチュード]で7.2と報告されています。この[[地震は、その震源地名から「スピタク地震」とも呼ばれ、アルメニア語では「Սպիտակի երկրաշարժ」として知られています。

壊滅的な被害

この地震がアルメニア北部にもたらした被害は極めて甚大でした。公式な発表によると、少なくとも約2万5000人が命を落とし、約1万9000人もの負傷者を出しました。

特に人的被害と構造物への被害が集中したのは、震央に近い都市部です。アルメニア第2の都市であったレニナカン（現在のギュムリ）は壊滅的な打撃を受け、推定で約1万5000人から1万7000人が犠牲になったとされています。街の多くの建物が崩壊し、都市機能は麻痺しました。また、震央となったスピタクでも深刻な被害が生じ、約4000人が犠牲となりました。

これらの被害の背景には、旧ソ連時代に建設された「フルシチョフカ」や「ブレジネフカ」と呼ばれる規格アパート群の耐震性の脆弱性が指摘されています。建設ラッシュ期に大量供給されたこれらの建物は、地震の強い揺れに対して構造的に弱く、多くの建物が倒壊し、無残な姿を晒しました。

広範囲にわたる建物の倒壊や損壊により、家を失った人々は実に40万人以上に上り、冬の寒さの中で厳しい避難生活を強いられました。

インフラへの影響

震央から約90kmという比較的近い距離には、メツァモール原子力発電所がありました。地震発生時、この発電所は稼働中でしたが、幸いにも直接的な被害を受けることはありませんでした。地震発生後も運転は正常に継続されました。

しかし、この大地震の発生は、周辺に立地する原子力施設の安全性に対する国際的な懸念を高めることとなりました。結果として、メツァモール原子力発電所は、地震発生を契機として一時的に運転を停止し、閉鎖されることとなりました。この出来事は、その後のアルメニアのエネルギー供給や原子力政策に大きな影響を与えました。

地震発生のメカニズム

アルメニア地震は、地質学的に非常に複雑かつ活動的な地域で発生しました。この地域は、北に広がる巨大なユーラシアプレートと、北向きにゆっくりと移動しているアラビアプレートが衝突し、圧縮される境界領域に位置しています。

このプレート間の強い圧縮力が、地殻に大きなひずみを蓄積させ、最終的に断層面が破壊されて地震が発生したと考えられています。地震によって解放されたエネルギーは莫大で、震源付近の地表には、最大で約2mもの落差を伴う明瞭な断層が出現しました。これは、地震時に地盤が大きく変動した直接的な証拠であり、この地震が活断層の活動によって引き起こされたことを示しています。

アルメニア地震は、プレート境界域における大規模地震の典型的な事例として、その後の地震学や防災研究に多くの教訓を与えました。また、この悲劇は国際社会からの大規模な人道支援を引き出し、冷戦終結前の国際協力の事例としても記憶されています。多くの犠牲者と被災者を生んだこの地震からの復興は、長期にわたる課題となりました。

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