ヴォーティシズム

ヴォーティシズム：イギリスが生んだ短命な前衛美術運動

ヴォーティシズムは、20世紀初頭のイギリスにおいて、キュビスムと未来派の影響を色濃く受けつつ独自性を保った、重要な前衛美術運動です。1913年から1914年頃にかけて勃興し、わずか数年で終焉を迎えたものの、その短い活動期間において、イギリス美術史に大きな足跡を残しました。しばしば「渦巻き派」とも呼ばれ、絵画、彫刻、詩といった多様な表現形態を包含していました。

運動の起源と主要メンバー

ヴォーティシズムの隆盛には、ロジャー・フライやオメガ・ワークショップスといったポスト印象主義への反動という背景がありました。未来派の創始者、フィリッポ・トムマゾ・マリネッティらの影響も大きく、運動の主要メンバーには、画家、彫刻家、そして詩人が集まりました。

特に中心的な役割を果たしたのは、パーシー・ウインダム・ルイス、エズラ・パウンド、デイヴィッド・ボンバーグ、ウィリアム・ロバーツといった面々です。彼らに加え、ローレンス・アトキンソン、フレデリック・エッチェルズ、ジェイコブ・エプスタイン、アンリ・ゴーディエ＝ブルゼスカ、ヘレン・ソンダース、ジェシカ・ディスモア、クリストファー・ネビンソン、カスバート・ハミルトン、エドワード・ワズワースといった芸術家たちが、それぞれの才能をヴォーティシズムに注ぎ込みました。

さらに、エズラ・パウンドの影響を受けたT・E・ヒューム（詩人、評論家、哲学者）や、写真家アルヴィン・ラングダン・コバーン（Vortographなどの作品で知られる）も、ヴォーティシズムに関連する人物としてしばしば言及されます。

『BLAST』と運動の終焉

ヴォーティシズムの活動は、1914年の機関紙『BLAST』の刊行によって大きく加速しました。『BLAST』には、運動の宣言が掲載され、その革新的な思想が広く知られるようになりました。T・S・エリオットも『BLAST』に関わっていたことが知られています。しかしながら、この運動は翌1915年には解散。短期間の活動に終わりました。

美術における特徴と評価

ヴォーティシズムの美術作品は、「動き」を重視する点から、未来派としばしば比較されます。しかし、幾何学的な形態や力強い線の強調といった点において、キュビスムの影響も顕著です。特に、プリミティビズムに傾倒した表現には、キュビスムの痕跡を見ることができます。

20世紀前半のイギリス美術において、ヴォーティシズムは、数少ない美術運動として重要な位置を占めています。その短命さにもかかわらず、革新的な表現と、キュビスムと未来派を融合させた独自のスタイルは、後世のアーティストに多大な影響を与え続けました。キュビスムや未来派といった既存の潮流に安住することなく、独自の表現方法を模索した彼らの活動は、今もなお美術史研究において重要な位置を占めています。

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