アレキサンドライト

アレキサンドライトについて

アレキサンドライトは、1830年にロシア帝国のウラル山脈にあるトコワヤのエメラルド鉱山で発見された宝石です。元々は金緑石の一変種で、発見当初はエメラルドと誤認されました。その後、特筆すべき特徴が明るみに出ました。それは、昼の太陽光の下では青緑色、夜になると人工の光によって赤に変わるという色変化です。この性質により、アレキサンドライトは当時のロシア皇帝ニコライ1世に献上されました。実際には、献上した日、即ち4月29日が皇太子アレクサンドル2世の誕生日であったことから、この珍しい宝石に名付けられたと言われています。この宝石は、当時のロシアの軍服の色が赤と緑だったことからも非常に人気を集めました。アレキサンドライトは6月の誕生石の一つでもあります。

性質・特徴

アレキサンドライトの結晶構造には、アルミニウムが鉄や特にクロムに置き換わっています。この変化によって、モース硬度は8.5に達し、非常に硬い宝石となっています。さらに、アルミニウムの一部がクロムに置換されることで、可視光スペクトル内の黄色の領域で強い吸光を示し、これが色変化の原因となります。人間の視覚は緑色への感度が高く、赤色には低いため、アレキサンドライトは太陽光のもとでは緑がかって見え、白熱灯やキャンドルの薄暗い明かりの中では赤みを帯びるのです。この色変化は、結晶を通して見る角度に依存しないため、他の多色性の宝石とは異なります。

1975年には人工合成アレキサンドライトの開発が成功し、商業生産も始まりました。ただし、人工宝石はあまり人気がないため、あくまで流通量は極めて少なく、高い製造コストから市場に出回ることは稀です。他方、人工合成石は医療用レーザー装置の媒質としても利用されています。

産出地

アレキサンドライトの主な産地には、ロシア、スリランカ、ブラジル、インド、タンザニア、マダガスカルなどがあります。特にロシアのウラル山脈産のものは、非常に優れた変色効果があるとされていますが、希少であるため高値で取引されることがあります。しかし、同地産の石は内部に傷や含有物を抱えがちです。同様に、ブラジル産のものも品質が高いことがあり、特に青みを帯びた緑色に変色するものは高額です。スリランカ産は大きな石が得られるものの、全体的な品質はあまり高くないとされています。

類似石

アレキサンドライトと同様の変色効果は、他の宝石にも見られます。アメシスト、アンデシン、不純物にバナジウムを含んだサファイアやスピネル、トルマリン、一部のガーネットにも見られる特性です。また、人工の宝石であるキュービック・ジルコニアやカラーチェンジサファイア、スピネルも安く手に入るように作ることができ、アレキサンドライトと謳われたジュエリーには、こうした石が用いられていることが多いです。

まとめ

アレキサンドライトは、その独特な美しさと希少性から、宝石界で特に重宝されています。歴史的背景や多様な特徴がその魅力をさらに引き立てています。

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