アレクサンダル1世 (セルビア王)

アレクサンダル1世オブレノヴィッチ：短い生涯と悲劇的な最期

アレクサンダル1世オブレノヴィッチは、セルビア王国の歴史において重要な転換期を象徴する人物です。1876年8月14日に生まれ、わずか12歳で王位を継承するという波乱の始まりでした。彼の父、ミラン1世は退位しており、アレクサンダル1世は母ナタリヤ摂政の下で統治することになります。しかし、父王の時代から続く国民からの支持不足という大きな課題が、幼い王の前に立ちはだかっていました。

アレクサンダル1世の治世は、最初から困難の連続でした。国民の支持は乏しく、彼の政策や統治能力は常に批判の的となりました。さらに、彼の結婚は、国民の反感をさらに増幅させる結果となりました。結婚相手である王妃ドラガとの関係は、多くの国民から不評を買っており、王室に対する不信感は日増しに高まっていきました。こうした状況は、後に起こる悲劇の伏線となっていくのです。

1903年6月11日、運命の日は訪れました。この時、アレクサンダル1世は、クーデターによって暗殺されます。クーデターを主導したのは、アピスことドラグーティン・ディミトリエビッチ率いる秘密結社「黒手組」でした。黒手組は、陸軍の士官を中心に構成され、長らくオブレノヴィッチ朝に不満を抱いていた勢力でした。

アレクサンダル1世と王妃ドラガは、王宮内で銃撃を受けました。そして、まだ息のある状態にもかかわらず、宮殿2階の窓から投げ落とされて殺害されるという、残忍な方法で命を奪われたのです。この事件は、5月クーデターと呼ばれ、セルビアの歴史に暗い影を落とすことになります。

このクーデターによって、オブレノヴィッチ朝の支配は終焉を迎えました。長きにわたる王朝の歴史に終止符が打たれたのです。そして、亡命していたカラジョルジェヴィチ家のペータルが帰国し、セルビア王に即位することになります。この出来事を境に、セルビアの政治情勢は大きく変化し、新たな時代へと突入していったのです。

クーデターの実行犯であるアピスら黒手組の幹部たちは、後にその罪を問われることになります。第一次世界大戦後、セルビアの亡命政権によって反逆罪で処刑されたのです。彼らの行動は、セルビアの歴史に複雑な足跡を残し、現在でも議論の的となっています。アレクサンダル1世の短い生涯は、悲劇的な最期を迎えることとなり、その死は、セルビアの政治史に大きな影響を与えました。12歳で即位した若き王の悲運の物語は、歴史に深く刻み込まれたのです。彼の短い統治期間は、セルビアが近代国家として歩み出すための重要な過渡期であったと同時に、王室の衰退と国民の不満、そして軍部の台頭が複雑に絡み合った時代であったことを物語っています。

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