アレクサンダー・ウニンスキー

アレクサンダー・ウニンスキー：20世紀を彩ったピアニストの軌跡

アレクサンダー・ウニンスキー（1910年～1972年）は、ウクライナのキーウ出身のピアニストとして、世界的な名声を博しました。キリル文字表記に忠実であればアレクサンドル・ユニンスキーとなりますが、日本ではラテン文字表記をドイツ語風に読んだ表記が一般的です。

生い立ちと才能の開花

1910年、ロシア帝国領キーウに生まれたウニンスキーは、幼少期から類まれな音楽的才能を示しました。キーウ音楽院でピアノを学び、その後1923年にはパリへ渡り、名教師ラザール・レヴィに師事。パリ音楽院ピアノ科で首席の栄誉に輝き、1932年にはショパン国際ピアノコンクールで優勝という快挙を成し遂げました。優勝決定には、ハンガリーの盲目のピアニスト、イムレ・ウンガルとの同点という波乱があり、審査員によるコイン投げの結果、ウニンスキーが優勝者として選ばれたという逸話が残っています。この勝利は、彼の輝かしいキャリアの幕開けを告げるものでした。

教育者としての貢献

演奏活動と並行して、ウニンスキーは教育者としても大きな功績を残しました。1955年にはトロント音楽院の教員となり、ブルース・マザーなど多くの才能ある音楽家を育成しました。マザーは後にウニンスキーを偲んで追悼作品を作曲しています。その後、南部メソジスト大学（ダラス）に移り、ジェフリー・スワン、デイヴィッド・モーガン、カーメン・アルヴァレス、ヘンリー・ドスキー、ドゥブラフカ・トムシッチ・スレボトニャクといった、後世に大きな影響を与えた多くのピアニストを指導しました。彼の指導は、数々の優れた音楽家を輩出し、音楽界の発展に貢献しました。

フィリップス録音：ショパン解釈の金字塔

演奏家としては、1950年代初頭に設立されたばかりのフィリップスレコードと契約。数々の名演を残しましたが、中でも特筆すべきはショパンの作品です。1950年代に録音された練習曲全集、1959年から1971年にかけて録音されたマズルカ、即興曲、スケルツォ、ワルツ、そしてピアノ協奏曲まで、ショパンの主要作品を網羅した録音は、現代においても高い評価を得ています。さらに、リストの作品録音も残しており、彼の幅広いレパートリーと高い演奏技術を証明しています。これらの録音は、後世のピアニストたちにとって貴重な音楽的遺産となっています。

洗練された演奏スタイル

ウニンスキーの演奏は、ニキタ・マガロフの演奏様式と共通点が見られます。感情に流されることなく、上品で洗練された表現が特徴です。しかしながら、適度なルバートの使用は、彼が20世紀初頭の美学を深く理解していたことを示しています。明晰で無駄のない演奏は、様式化されたヴィルトゥオーゾ的なショパン演奏の伝統に反するものでしたが、その独自性は第2回ショパン国際ピアノコンクールの審査員にも高く評価されました。彼の演奏の「近代性」は、1937年に『リベルタテア』紙でディヌ・リパッティが「ブライロフスキーやウニンスキーがサル・プレイエルを満員にすることができるからといって、ザウアーが輝かしい過去にもかかわらず、ちっぽけなサル・エラールで演奏しなければならないなどとどうして考えることができようか？」と発言したことにまで遡ることができるでしょう。これは、ウニンスキーの演奏が当時既に斬新で革新的であったことを示す重要な証左と言えるでしょう。

アレクサンダー・ウニンスキーは、ピアニストとして、そして教育者として、20世紀の音楽史に大きな足跡を残しました。彼の演奏と教えは、多くの音楽家に影響を与え続け、今後も音楽史において重要な位置を占め続けることでしょう。

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