アレクサンドル2世暗殺事件 (1881年)

1881年3月13日、ロシア皇帝アレクサンドル2世は、サンクトペテルブルクで暗殺されました。この事件は、革命組織「人民の意志」によって周到に計画され、皇帝は複数の爆弾攻撃により命を落としました。この暗殺は、19世紀の反体制運動において最も成功した事例とされ、ロシア帝国の歴史に大きな影響を与えました。

事件の背景

「人民の意志」は、アレクサンドル2世の暗殺を革命の引き金とすることを目的としていました。1879年8月には、暗殺計画が決定されましたが、実行までには多くの困難がありました。組織は、皇帝の日常的な行動パターンを詳細に調査し、複数の暗殺計画を立てました。皇帝がミハイロフスキー馬場から冬宮殿へ戻るルートに焦点を当て、マラヤ・ソドーヴァヤ通りとエカテリーナ運河沿いの2つのルートを想定しました。

マラヤ・ソドーヴァヤ通りでは、地下にダイナマイトを仕掛けた地雷を設置し、さらに4人の実行犯が爆弾を持って待機するという計画でした。一方、運河沿いのルートでは、爆弾の投擲のみが手段となりました。この計画のために、チーズ店を装ってトンネルを掘り、大量のダイナマイトを埋設しました。また、手製爆弾はニコライ・キバリチチによって設計・製造されました。

当初、暗殺計画の指揮はアンドレイ・ジェリャーボフが担当する予定でしたが、実行直前に逮捕されたため、彼の妻であるソフィア・ペロフスカヤが代わりを務めることになりました。

暗殺の実行

事件当日、アレクサンドル2世は馬車でミハイロフスキー馬場から冬宮殿へ帰る途中でした。当初予定されていたマラヤ・ソドーヴァヤ通りの地雷ルートは回避され、皇帝の馬車はエカテリーナ運河沿いを進みました。ペロフスカヤは、事前に取り決めた合図としてハンカチで鼻をかみ、実行犯たちに運河沿いへの移動を指示しました。皇帝は、予定外のエカテリーナ大公女訪問を思い立ちましたが、これが暗殺犯たちに追いつく時間を与えてしまいました。

午後2時15分、馬車が運河沿いを走行中、リサコフが皇帝の馬車に爆弾を投げつけました。爆発により、馬車の後方にいたコサック兵が死亡し、他に負傷者も出ました。しかし、皇帝自身は無傷で馬車から降り、リサコフは取り押さえられました。皇帝は負傷者を見舞い、自らの無事を側近に伝えますが、その直後、フリニェヴィエツキが再び爆弾を投げつけ、皇帝は致命傷を負いました。この2度目の爆発により、皇帝は暗殺犯とともに倒れ、周囲の群衆にも多くの負傷者が出ました。

瀕死の重傷を負ったアレクサンドル2世は、冬宮殿に運ばれましたが、その日の午後3時30分に息を引き取りました。彼は20年前に農奴解放令に署名した同じ場所で最期を迎えました。

事件後

実行犯であるリサコフは、逮捕後に捜査に協力し、組織のメンバーが次々と逮捕されました。ジェリャーボフ、ペロフスカヤ、キバリチチ、ゲルフマン、ミハイロフ、リサコフの6名は、絞首刑を宣告され、1881年4月15日に刑が執行されました。ゲーシャ・ゲルフマンは妊娠していたため刑が延期されましたが、後に強制労働に減刑され、出産後に合併症で死亡しました。イェメリアノフとフィグナーも逮捕され、有罪判決を受けましたが、後に恩赦によって釈放されました。

暗殺現場には、後に血の上の救世主教会が建設されました。この教会は、暗殺されたアレクサンドル2世を偲ぶためのもので、彼の命を奪ったまさにその場所に建てられています。教会の内部には、皇帝が倒れた場所を示す豪奢な廟が設けられており、事件の悲劇を今に伝えています。

結論

アレクサンドル2世暗殺事件は、ロシア帝国の歴史において大きな転換点となりました。この事件は、革命運動の過激さを示すとともに、皇帝に対する不満が社会に根深く存在していたことを明らかにしました。暗殺事件は、後のロシア革命の遠因の一つともなり、その影響は計り知れないものがあります。

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