アレクサンドロフ (都市)

アレクサンドロフは、ロシアのヴラジーミル州に位置する歴史的な都市で、モスクワから北東へ約100kmの場所にあります。2021年の時点で人口は約5万7千人を擁しています。

この街の歴史は、16世紀初頭にモスクワ大公ヴァシーリー3世が、自身の狩猟の趣味のために屋敷を設けたことに始まります。その後、アレクサンドロフは、ロシアの歴史において重要な役割を果たすことになります。

1564年12月から1565年2月までのわずか3ヶ月間、アレクサンドロフはロシアの首都となりました。当時のツァーリ、イヴァン4世（イヴァン雷帝）が突然モスクワからこの地に都を移したのです。貴族たちの嘆願により、イヴァン4世は3ヶ月後にモスクワへの帰還に同意しましたが、その際、教会にオプリーチニナ制度の創設を認めさせました。

オプリーチニナ体制下では、ロシアの国土はツァーリ直轄領であるオプリーチニナと、従来の制度が適用されるゼームシチナに二分されました。オプリーチニナではツァーリによる独裁が行われ、多くの貴族や聖職者が粛清されました。オプリーチニナの行政府はアレクサンドロフに置かれ、イヴァン4世は離宮でオプリーチニキと共に過ごしました。1572年にオプリーチニナが廃止されるまで、アレクサンドロフは事実上の首都としての機能を果たしていました。その後もイヴァン4世は晩年の1581年まで、アレクサンドロフ離宮で過ごしました。

アレクサンドロフスカヤ・スロボダ（アレクサンドロフ離宮、アレクサンドロフ集落）は、16世紀前半から17世紀にかけて建設された多数の聖堂や宮殿建築の複合体です。特に至聖三者大聖堂（1513年）は、歴史的な価値が高い建築物として知られています。この複合施設は、頑丈な城壁と塔に囲まれており、その堅牢な構造は当時の権力を象徴しています。現在は博物館として公開されており、イヴァン雷帝の生涯や業績に関する展示や、象牙の王冠などの貴重な収蔵品を見ることができます。

市街地には、古い聖堂や美術館など、歴史的な見どころが点在しており、この街の豊かな歴史を物語っています。アレクサンドロフは、ロシアの歴史に深く関わる重要な都市であり、その歴史的建造物や文化的な遺産は、多くの観光客を魅了しています。この街を訪れることで、イヴァン雷帝の時代や、ロシアの歴史における重要な転換期を垣間見ることができるでしょう。

もう一度検索