ヴァシーリー3世

ヴァシーリー3世について

ヴァシーリー3世（1479年3月25日 - 1533年12月4日）は、モスクワ大公として1505年から1533年まで在位し、イヴァン3世の次男であり、イヴァン4世の父としても知られています。彼の治世は、領土の拡張や内政の改革が特徴であり、特に正教会との関係を強化した点が挙げられます。

後継者争いと即位

ヴァシーリーは、1490年代に異母兄のイヴァンと、その遺児ドミトリーとの間で激しい後継者争いを繰り広げました。この争いは、母親たちに支えられたもので、特に正教会と異端の「ユダヤ派」が絡む複雑な状況でした。イヴァン3世は、一度はドミトリーを共同統治者に任命しましたが、最終的にはヴァシーリーを後継者とし、ドミトリーとその母エレナは排除されることになりました。

治世と領土拡張

ヴァシーリー3世の即位後、彼は父イヴァン3世が取り組んでいた領土併合政策を引き継ぎました。未婚で亡くなった兄弟たちの領地を分割相続することなく、モスクワ国家全体の安定を図ったのです。彼はまた、プスコフ共和国（1510年）、ヴォロク公国（1513年）、リャザン公国（1521年）、ノヴゴロド・セーヴェルスキー公国（1522年）などの地域を次々と併合し、モスクワ国家を強化しました。

リトアニア大公国との戦争でも成功を収め、スモレンスクを獲得するなど、その外交的手腕も評価されるべきです。南方ではカザン・ハン国との関係をうまく扱い、親モスクワ派のハンを立てた点も目立ちます。さらに、神聖ローマ帝国やオスマン帝国、ムガル帝国に使節を派遣し、国際的な関係の構築にも貢献しました。

内政改革

内政においては、地方行政を整備し、直接統治体制へと移行しました。また、財政や外交の専門家を登用し、非貴族出身者でも役人になる機会を提供しました。これにより、国家の機能性が高まり、より効率的な政府を実現しました。正教会との協力関係も強化され、ツァーリには教会を保護する義務が課せられる一方、教会もツァーリの権力を支援する構図が出来上がりました。

婚姻と個人の道

動乱の中、ヴァシーリーは1505年に伝統的な花嫁コンテストを開催し、1500人の貴族の娘の中からソロモニヤ・サブーロヴァを妻に迎えました。しかし、子供ができず、1525年には彼女との婚姻を無効にし、修道院に幽閉しました。その後、彼はリトアニア系の貴族娘エレナ・グリンスカヤと再婚し、二人の子供、イヴァン（後のイヴァン4世）とユーリーをもうけることができました。この再婚に対して聖マクシム・グレクが反対したため、彼は投獄されてしまいました。

最期と評価

結局、ヴァシーリー3世は1533年に敗血症でこの世を去りました。彼の死後、未成年のイヴァン4世を取り巻く大貴族たちによる権力闘争の時代が続きました。趣味は狩猟や修道院巡礼であり、西欧の思想や技術にも関心を持つ開明的な君主として、多くの業績を残しました。彼の政策や改革は、後のロシア帝国の基盤を築く重要な要素ともなりました。

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