アレクセイ・シューセフ

アレクセイ・ヴィクトロヴィチ・シューセフ（Alexey Viktorovich Shchusev, 1873年10月8日 - 1949年5月24日）は、帝政ロシアからソビエト連邦にかけて活躍した建築家です。現在のモルドバの首都キシナウで生まれ、サンクトペテルブルクの芸術アカデミーで建築を学びました。アカデミーではレオン・ベノワに師事し、初期にはネオロシア様式の建築を手がけました。しかし、その作風は特定のスタイルに固執するものではなく、スラブの風土を取り入れた折衷的なスタイルや、社会主義リアリズムの影響を受けた構成主義的な作品も残しています。

シューセフのキャリアはソビエト連邦時代に大きく花開きました。彼は、ストロガノフ芸術産業専門学校、ヴフテマス（高等芸術技術工房）、モスクワ建築大学で教鞭を執り、後進の育成にも尽力しました。1919年から1929年までモスクワ建築家協会の会長を務め、1926年から1929年にはトレチャコフ美術館の館長も務めるなど、建築界の要職を歴任しました。また、ロシア建築博物館（現シューセフ建築博物館）の初代館長としても知られています。

彼の建築作品は多岐にわたり、ソ連の建築様式に大きな影響を与えました。特に、モスクワの都市計画においては重要な役割を果たし、ソコル・ガーデンシティの監修や、モスクワ再建都市計画にも携わりました。また、レーニン廟の建設やモスクワ地下鉄の駅の設計にも関わり、その名前はモスクワの街のあちこちに残っています。彼が自宅に寄宿させたコルシュノフ、コンスタンチン・メーリニコフ、イリア・ゴーロソフ、ニコライ・ラドフスキーといった建築家たちは、当時のモスクワ建築を牽引する存在となりました。

主な作品としては、以下のものが挙げられます。

ソコル・ガーデンシティ監修（1923年）
レーニン廟（木造の仮物は1924年、完成は1930年）
トレチャコフ美術館新館
環状線モスクワのコムソモーリスカヤ駅・コスモールナカヤ整備計画（1913年から1926年）
環状線カザン駅
鉄道駅中央文化クラブ
レーニン軍事アカデミー
レーニン図書館建築招待コンペティション案（1928年）
ルビャンカ刑務所・旧ソ連国家保安委員会 (KGB)本部
セントアナスタシア礼拝堂
マルフオ・マリインスカヤ修道院
クリコープ平野の記念聖堂
マセッシアホテルコンペティション案
モスクワ大学医学解剖教室コンペティション案（チェルニシェフらと）
モスクワ中央電信電報局コンペティション案（1925年、構成主義スタイルで）
モスクワ・ナルコムゼン（農業省）庁舎（1929年-1930年）
ロス・アン・ドンの劇場（ゲルフレイクらと）（1930年-1935年）
ホテル・モスクワ（1938年、ホテル前地下鉄駅にも関与）
ウズベキスタン・タシュケントにあるナヴォイ劇場（1942年）

これらの作品は、彼の才能と幅広い知識、そして社会への貢献を示しています。シューセフの業績は、ロシア建築史において重要な位置を占めており、その影響は現代にも及んでいます。

彼の建築に関する研究は、以下の文献でさらに深く知ることができます。

ロシア建築三つの旅 [ユーラシア・ブックレット] (No．61) 浜野アーラ著 浜野道博訳 東洋書店 2004.6
ロシア・アヴァンギャルド建築 [Inax叢書] (8) 八束はじめ INAX 1993.11
ロシアビザンチン [建築巡礼] (19) 内井昭蔵 丸善
ロシアの木造建築－民家・付属小屋・橋・風車 A.B.オポローヴニコフ 井上書院 1986
世界の歴史 11 井上浩一 中央公論新社 1998

また、以下の外部リンクも参考になります。

Alexey Schusev's Constructivist Narkomzem building at galinsky.com
（ロシア語）Shchusev Museum of Architecture.

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