アレクセイ・ノビコフ＝プリボイ

アレクセイ・シールィチ・ノヴィコフ＝プリボイ

アレクセイ・シールィチ・ノヴィコフ＝プリボイ（1877年3月24日 - 1944年4月29日）は、ロシアの作家で、特に日本海海戦に関する著作『ツシマ』で知られています。彼は水兵としての体験を基に執筆し、海戦の記録として重要な作品を残しました。

生い立ちと教育

彼の本名は「ノヴィコフ」で、「プリボイ」は波と関連する意味を持つペンネームです。ロシア帝国タンボフ県の農村マトヴェイェフスコイェに生まれ、貧しい農家の一人息子として育ちました。教会の学校で学び、母親は彼が修道士になることを願っていましたが、海や船乗りの話を聞くうちに水夫になる夢を抱くようになったのです。

22歳で兵役に就くと、バルト海のクロンシュタット軍港で過ごし、そこで初めて新聞に投稿をしました。しかし、1903年には革命的思想を広めたとして逮捕され、1ヶ月後に釈放されました。陸軍での生活は文学への関心を高めるものでしたが、彼の夢は遠く太平洋で現実のものとなることになります。

日本海海戦への参加

1904年に日露戦争が始まると、陸軍は「政治的分子」を排除するため、ノヴィコフは太平洋艦隊に強制配置されました。艦船「アリョール」の水兵として、彼は多くの海を渡り、1905年5月27日には対馬沖の海戦で日本軍と交戦しました。この戦いはロシアの悲惨な敗北となり、彼は日本軍の捕虜となります。

作家としての活動

捕虜となった彼は、日本の熊本市の収容所で自身の体験を記録し始めました。彼は他の水兵からも話を聞き、海戦の全体像を描くことに努めました。1906年に帰国した後、彼は海戦についてのエッセイを新聞に投稿しましたが、その内容は当局に目をつけられてしまいます。結果、彼は1907年にフィンランドを経由してロンドンに亡命しました。

亡命中、彼は鍛冶屋や製本職人として生活を立て、やがてゴーリキーの勧めで亡命体験記を執筆し、海に関する短編小説も書くようになります。彼は1913年にロシアに戻り、初めての書籍を刊行しましたが、検閲の影響で遅れが生じました。

代表作『ツシマ』

1920年に彼は主著『ツシマ』の執筆に着手し、1932年に第一部が、1935年には第二部が発表されました。この書籍は日本海海戦についての初の詳細な記録として注目され、多くの批判にもさらされました。彼は一般の水兵たちを英雄的に描く一方で、ツァーリズム時代の指導者たちの無能さを厳しく批判しました。

この作品は、社会主義リアリズムの一環として評価され、日露戦争に関する研究において重要な資料となっています。後に、司馬遼太郎の小説『坂の上の雲』にも影響を与えました。

晩年と影響

晩年には、ロシア海軍に関する論文を多数執筆しましたが、その成果は『ツシマ』ほどの反響を呼ぶことはありませんでした。彼は1941年にスターリン賞を受賞し、最後の作品となる『艦長』を残してモスクワで亡くなりました。

彼の名を冠した客船「ノヴィコフ＝プリボイ」がヴォルガ河で運行されていることもあり、彼の影響は今も色濃く残っています。ノヴィコフ＝プリボイの生涯と業績は、海に生きた人々の物語であり、歴史の中で一際輝く存在であることを示しています。

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