ツァーリズム

ツァーリズムとは、ロシアにおけるツァーリ（皇帝）による絶対君主制体制を指します。この体制は、モスクワ・ロシアからロシア帝国にかけて存在し、ロシア社会の独特な性格を形成する上で重要な役割を果たしました。

ツァーリズムの成立と発展

ツァーリズムの起源は、16世紀のイヴァン4世の時代に遡ります。イヴァン4世は、専制的な支配体制を築き、その後のツァーリズムの基礎を築きました。18世紀には、ピョートル1世（ピョートル大帝）によって、ツァーリズムはさらに強化され、確立しました。ピョートル1世は、西欧化政策を積極的に推進し、ロシアを近代化しようとしましたが、同時にツァーリの権力を絶対的なものとしました。

ツァーリズムの特徴

ツァーリズムの特徴は、ツァーリが国家の最高権力者であり、政治、軍事、宗教のすべての分野において絶対的な権力を持っていた点にあります。また、ツァーリズムは農奴制と密接に結びついており、農民はツァーリに隷属する存在でした。この農奴制は、ロシアの社会経済的な後進性を象徴するものであり、ツァーリズム体制を支える基盤となっていました。ツァーリズムは、西欧の君主制とは異なり、法による制限を受けず、ツァーリの恣意的な決定が優先されるという特徴を持っていました。

ツァーリズムの動揺

18世紀後半には、啓蒙主義の影響がロシアにも及び、啓蒙専制君主も登場しました。啓蒙主義は、理性を重視し、個人の自由や権利を主張する思想であり、ツァーリズムの絶対的な権力とは相容れないものでした。また、ピョートル大帝以降、ロシアでは、西欧化を推進する西欧派と、伝統的なロシアの政治体制を維持しようとするスラヴ派との対立が激化しました。啓蒙主義は、西欧派の一つの潮流と見なすことができます。これらの対立は、ツァーリの親政にも影響を与え、ツァーリズムの内部的な矛盾を露呈させました。19世紀には、資本主義の浸透により、都市部を中心に労働者階級が形成され、労働運動や社会主義運動が活発化しました。また、日露戦争の敗戦や血の日曜日事件などの出来事は、ツァーリへの国民の不信感を高め、ツァーリズムの動揺を決定的なものとしました。

ツァーリズムの終焉

これらの要因が複合的に作用し、1917年のロシア革命へとつながり、ツァーリズムは終焉を迎えました。ニコライ2世は退位を余儀なくされ、ロシア帝国は崩壊しました。ツァーリズムは、ロシアの歴史において、絶対的な権力と社会の不平等を生み出した体制として、記憶されることとなりました。ツァーリズムは、ロシア社会の発展を阻害し、革命を招いた要因の一つであり、その終焉は、ロシアの歴史における大きな転換点となりました。

関連事項

絶対王政（絶対主義）

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