アレックス・キャゼルヌ

アレックス・キャゼルヌ：後方支援の天才、ヤン艦隊を支えた良き家庭人

アレックス・キャゼルヌは、田中芳樹のSF小説『銀河英雄伝説』に登場する、自由惑星同盟側の重要な人物です。作中では「キャゼルヌ」と呼ばれ、その卓越した事務処理能力と人柄で、多くの人々に慕われました。

概要

キャゼルヌは、同盟軍の後方勤務において類まれなる才能を発揮する、軍事事務（主計）の天才です。33歳という若さで准将に昇進するなど、将来を嘱望されていました。イゼルローン要塞がヤン艦隊の拠点となると、要塞事務監として、兵站や物流といった後方業務を一手に引き受け、ヤン艦隊の活動を支えました。

後輩であるヤン・ウェンリーとは、ヤンが士官学校の学生の頃からの付き合いがあり、シトレと並んで、初期からヤンを評価していた人物の一人です。ユリアン・ミンツやフレデリカ・グリーンヒルをヤンに引き合わせたのもキャゼルヌでした。また、プライベートでは良き家庭人であり、ヤンとは家族ぐるみの親交がありました。

本編での初登場は、アスターテ会戦後にハイネセンに帰還したヤンとの会話（第1巻）。本伝以前を描いた外伝にも多く登場し、時系列上の初登場は外伝4巻『螺旋迷宮』です（当時は27歳で統合作戦本部参事官、階級は中佐）。

略歴

宇宙暦761年5月1日生まれ。士官学校卒業後、主に後方勤務に従事しました。ヤン・ウェンリーが士官学校在学中、事務次長として同校に赴任したことがきっかけで知り合い、互いに親交を深めました。

宇宙暦788年（ヤンがエル・ファシルの英雄になった年）には、27歳で中佐/統合作戦本部参事官を務めていました。宇宙暦794年には、33歳で准将/第6次イゼルローン要塞攻略戦の後方参謀を務めています。宇宙暦796年には、35歳で少将/統合作戦本部長シドニー・シトレ元帥の次席副官を務めました。

同年の同盟軍の帝国領侵攻では、後方主任参謀として補給を担当。しかし、この侵攻が失敗に終わり、上司のシトレの引退に連座する形で左遷され、第14補給基地司令官としてハイネセンを去りました。その後、イゼルローン要塞司令官となったヤン・ウェンリーの要請で、797年1月16日、要塞事務監としてイゼルローンに赴任しました。

クーデター鎮圧のためヤン艦隊がイゼルローンから離れている間は、要塞司令官臨時代理を務めました。ラグナロック作戦でイゼルローン要塞から撤退してハイネセンに帰還後、中将に昇進しましたが、ヤン艦隊の運営担当としてそのまま残り、バーミリオン星域会戦にも参加しました。バーラトの和約後に辞表を提出しましたが却下され、後方勤務本部長代理に就任しました。

799年7月に発生したヤンの逮捕に関する騒動には関与できませんでしたが、ヤン一党がハイネセンを脱出する際、連絡を受け、即座に同行を決意。ロックウェル統合作戦本部長の慰留を拒否し、ヤンと合流しました。以降は常にヤンと行動を共にし、ヤン艦隊やイゼルローン要塞の補給や補充を担当。ヤンの死後もユリアンを軍事司令官代理に擁立し、シヴァ星域会戦終結まで任務を続けました。

能力

後方勤務と事務処理のエキスパートとして、ヤン艦隊及びイゼルローン要塞の運営面を一手に引き受けていました。彼の不在時には事務全般が滞り、苦情が殺到したというエピソードからも、その能力の高さがうかがえます。士官学校時代に書いた組織工学に関する論文が大企業の経営陣に認められ、スカウトされたという経歴も持っています。副官のフレデリカ・グリーンヒルや参謀長のムライと並んで、デスクワークが苦手なヤンにとっては欠かせない人材でした。

ラグナロック作戦では、「箱舟計画」によって、イゼルローン要塞の506万8224人を、ロイエンタールが指揮する帝国軍の脅威から脱出させることに成功しました。

戦闘指揮官としては頼りない面もありましたが、シェーンコップやメルカッツといった戦闘の専門家との関係は良好で、彼らの能力を尊重していました。また、軍官僚としてはエリートでありながら、それを鼻にかけることがなく、下位者や年少者の意見にも耳を傾ける度量の広さも持ち合わせていました。

人柄

エリート官僚でありながら、その言葉が持つ負のニュアンスとは無縁な人物です。毒舌家で上司にも平気で噛み付くため、同盟軍上層部では煙たがられることもありましたが、部下や後輩の面倒見が良く、気さくに振る舞うため、ヤンやアッテンボローからの信頼は厚かったです。ユリアンの恋心に気づき、ヤンとフレデリカの結婚が決まった際には、ユリアンをさりげなく励ますなど、細やかな気配りもできる人物でした。

家族

宇宙暦789年2月25日、大尉時代に知り合った上官の娘オルタンス・ミルベールと結婚。2女をもうけました。愛妻家であり、家庭を大切にする人物でした。長女のシャルロット・フィリスをユリアンと結婚させたいという希望を持っていましたが、シェーンコップの娘であるカーテローゼ・フォン・クロイツェルが登場したため、その願いは叶いませんでした。

演じた人物

アニメ
キートン山田 - OVA
川島得愛 - 『Die Neue These』
舞台
天宮良
米原幸佑

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