バロック美術

バロック美術とは

バロック美術は、16世紀末から18世紀初頭にかけてヨーロッパ各国で展開された美術様式です。この時代は、ルネサンス期の美術が理想とした均衡の取れた構成から脱却し、意図的にバランスを崩した、より動的でダイナミックな表現が追求されました。ルネサンス後期の巨匠ミケランジェロの晩年の作品は、マニエリスムともバロックの先駆けとも評されており、バロック美術の萌芽を示すものとして注目されています。

この美術様式が誕生した背景には、宗教改革を経たカトリック教会の対抗改革（反宗教改革運動）や絶対王政の確立といった社会的な変動がありました。これらの要素が複合的に絡み合い、バロック美術独特の力強く、時にドラマティックな表現を生み出したと考えられています。

絵画

バロック絵画は、ルネサンス絵画の特徴であった均衡の取れた構図とは対照的に、躍動感にあふれ、明暗のコントラストが際立っている点が特徴です。描かれる人物の動きは流動的で、見る者に強い印象を与えます。画題としては、ギリシア神話や聖書の物語、聖人たちの姿、さらには貴族や王族の生活や肖像などが好んで取り上げられました。作品の注文主は、王族、貴族、教会といった富裕層が中心でした。

バロック絵画の先駆者として知られるのは、北イタリアのロンバルディアで修業を積み、ローマやナポリで活躍したカラヴァッジョ（1573-1610）です。彼は、明暗を強調する革新的な技法を用い、その後のバロック絵画に大きな影響を与えました。また、ギリシャ出身でスペインのトレドで活動したエル・グレコも、バロック絵画の先駆者として高く評価されています。

17世紀はバロック絵画が最も隆盛した時代であり、スペイン、スペイン領ネーデルラント、オランダなどがその中心地となりました。この時代の代表的な画家としては、スペインのベラスケス、フランシスコ・デ・スルバラン、バルトロメ・エステバン・ムリーリョ、スペイン領ネーデルラントのルーベンス、オランダのレンブラント、フランスのニコラ・プッサンなどが挙げられます。

建築

バロック建築は、装飾を多用した華麗な様式を特徴としています。イタリアでは、ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ、ボッロミーニ、ピエトロ・ダ・コルトーナ、カルロ・マデルノ、フィリッポ・ユヴァーラといった建築家たちが活躍し、壮大でダイナミックな建築物を数多く生み出しました。ローマには、トレヴィの泉など、バロック建築の傑作が数多く存在します。

彫刻

バロック彫刻は、建築物の装飾として用いられることが多く、また、単体でもその芸術性が高く評価されています。ジャン・ロレンツォ・ベルニーニの『聖テレジアの法悦』は、バロック彫刻の代表作として非常に有名です。この作品は、聖テレジアの神秘的な体験を劇的に表現しており、見る者に強い感動を与えます。

関連項目

• - 美術
• - 美術史
• - バロック
• - バロック建築

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