アロウズ・A20

アロウズA20：1999年シーズンの苦闘

1999年のF1世界選手権でアロウズチームが使用したマシン、アロウズA20は、マイク・コフランが設計を手掛けました。ドライバーはF1デビューとなるペドロ・デ・ラ・ロサと、ティレルから移籍してきた高木虎之介の2名でした。

開発と性能

A20は、前年モデルであるA19をベースに開発されました。ベースとなったA19はジョン・バーナードによる設計でしたが、A20ではコフランが改良を加えています。外観上は、デ・ラ・ロサのスポンサーであるレプソルのオレンジ色がマシン前部に施された点を除けば、大きな変更はありませんでした。特徴的なサイドポンツーンなどは、A19から引き継がれています。

搭載されたエンジンは、アロウズが独自に開発したハート製エンジンでした。しかし、このエンジンは、当時のF1トップチームと比較すると出力不足であり、競争力を欠いていました。さらに、エンジンの開発者であるブライアン・ハートは、開発過程でトム・ウォーキンショーとの所有権争いに巻き込まれ、開発から離脱するという事態も発生しました。

A20のパフォーマンスは低く、信頼性にも欠けていました。レースでは、ミナルディと最下位争いを繰り広げるなど、苦戦を強いられました。シーズンを通して獲得したポイントは、デ・ラ・ロサがデビュー戦で獲得した1ポイントのみ。新規参入チームであるBARを除けば、アロウズは最下位に沈みました。デ・ラ・ロサは有望なドライバーであると評価されましたが、高木虎之介はチームとのコミュニケーションに課題を抱え、シーズン終了後にチームを去りました。その後、2000年シーズンにはヨス・フェルスタッペンがアロウズのドライバーを務めました。

資金難とt-minusブランド

アロウズチームは、メインスポンサーを持たない資金難の状態にありました。チームの株式は、ナイジェリアのマリク王子とイギリスの投資銀行によって取得され、A20にはマリク王子が提唱する「t-minus（ティーマイナス）」ブランドの広告が掲載されました。開幕前のテストから、A20のサイドポンツーンにはカウントダウンが表示され、第3戦サンマリノGPでブランド発表会が行われるという演出が施されました。

マーケティング担当者のダニエル・オーデットは、アパレル、エナジードリンク、マウンテンバイク、オートバイ、スーパーカーなど、様々なコラボレーション商品を展開する計画を発表しました。しかし、この計画は実現せず、マリク王子はチームを離脱することになりました。

まとめ

アロウズA20は、資金不足、低出力エンジン、信頼性の問題など、多くの困難を抱えたシーズンを過ごしました。デ・ラ・ロサのデビュー戦での1ポイント獲得が唯一の光明と言えるでしょう。このマシンは、F1における厳しい競争環境と、資金力の重要性を改めて示す例となりました。マシンの性能不足だけでなく、チーム運営における様々な問題が、結果に大きく影響したシーズンだったと言えるでしょう。アロウズチームのその後は、この経験を踏まえ、どのようにチーム運営、マシン開発、スポンサー獲得といった課題を克服していったのか注目に値します。

もう一度検索