アワ・シング

アワ・シング

『アワ・シング』（Our Thing）は、アメリカ出身の著名なジャズ・テナー・サクソフォン奏者、ジョー・ヘンダーソンによって1963年に録音され、翌1964年にブルーノート・レコードから発表されたスタジオ録音によるリーダーアルバムです。

解説

本作は、ジョー・ヘンダーソンが自身の名前でリリースしたリーダー作品としては二枚目にあたります。彼の記念すべきデビュー作である『ページ・ワン』が同年（1963年）に録音・発表されているため、非常に短いスパンでのリリースとなりました。

このアルバムに参加している主要なメンバーのうち、トランペット奏者のケニー・ドーハムとドラマーのピート・ラロカは、前年に発表されたデビュー作『ページ・ワン』にも参加しており、本作でも変わらず重要なサイドメンとしてヘンダーソンを支えています。特にドーハムは、作曲家としても本作に楽曲を提供しており、演奏面だけでなくクリエイティブな面でもアルバムに貢献しています。

ピアニストとして本作に参加したアンドリュー・ヒルは、当時、ヘンダーソンと共にケニー・ドーハムが率いるクインテットで活動を共にしていました。この『アワ・シング』での共演は、ヒルにとって非常に重要な意味を持つことになります。なぜなら、このセッションがアンドリュー・ヒルがブルーノート・レコードと関わる最初の機会となり、その後のブルーノートにおける彼の革新的で多作な活動へと繋がる大きな契機となったからです。

音楽評論サイト「オールミュージック」のベテラン評論家、スコット・ヤナウは、本作に5点満点中4.5点という高い評価を与えています。彼のレビューによれば、『アワ・シング』は伝統的なハードバップの慣習をしっかりと踏まえつつも、当時の新しい動きであったアヴァンギャルドジャズからの示唆や影響を巧みに取り入れていると指摘しています。また、ヤナウは、この作品がジョー・ヘンダーソンのキャリアにおいて比較的初期の段階でありながらも、彼が将来的にジャズ界の偉大なテナー奏者の一人となるであろう、その計り知れない潜在能力をすでにこの時点で明確に示していたと評しています。この評価からもわかるように、『アワ・シング』はヘンダーソンの初期代表作の一つとして、またハードバップ以降のジャズの流れを捉える上で重要な作品として位置づけられています。

収録曲

特記なき楽曲はジョー・ヘンダーソンが作曲しています。

1. ティーター・トッター (Teeter Totter) - 8:36
2. ペドロズ・タイム (Pedro's Time) (作曲: ケニー・ドーハム) - 10:07
3. アワ・シング (Our Thing) - 5:38
4. バック・ロード (Back Road) (作曲: ケニー・ドーハム) - 6:22
5. エスカペード (Escapade) (作曲: ケニー・ドーハム) - 8:05

リマスターCDボーナス・トラック

6. ティーター・トッター（別テイク） (Teeter Totter (Alternate Take)) - 7:10

参加ミュージシャン

ジョー・ヘンダーソン - テナー・サクソフォン
ケニー・ドーハム - トランペット
アンドリュー・ヒル - ピアノ
エディ・カーン - ベース
* ピート・ラロカ - ドラムス

本作は、これらの個性豊かなミュージシャンたちが集結し、ハードバップの熱気とモダンジャズの探求心を融合させた、聴き応えのある一枚となっています。ヘンダーソンの力強くも歌心のあるテナー・サクソフォンのプレイを中心に、各メンバーが緊密なアンサンブルと刺激的なソロを展開しており、発表から数十年を経た現在でも多くのジャズファンに聴き継がれています。

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