アンの想い出の日々

『アンの想い出の日々』概説

『アンの想い出の日々』（原題：The Blythes Are Quoted）は、カナダ出身の作家L・M・モンゴメリによって書かれた短編小説集です。この作品は彼女の遺作であり、2009年に刊行された『赤毛のアン』シリーズの第9作と位置付けられています。モンゴメリの最晩年にあたる作品で、その内容は彼女が1942年に亡くなる直前まで手掛けていたものです。作品のタイトルは、「ブライス一家が噂されている」という意味を持ち、物語の中でのブライス一家の噂話がモチーフになっていることを示唆しています。

概要

本作は、モンゴメリが生涯を通じて築き上げたアン・シリーズの最終作でありますが、発表の順番は1939年の『炉辺荘のアン』以来70年近くを経た新たな展開です。この短編集は、15篇の短編小説、41篇の詩、そして詩を巡る家族の会話が特徴的な12のシーンから構成されています。特に注目すべきは、本作が唯一の二部構成であり、1部は第一次世界大戦前、2部は戦後から第二次世界大戦前夜の時代を描いている点です。

モンゴメリの故郷、カナダでは1970年代に一部内容が省略された形で「The Road to Yesterday」という短編集が出版されましたが、完全版は2009年に発表されています。また、日本においては、モンゴメリの『赤毛のアン』シリーズの訳者である村岡花子の孫、村岡美枝が翻訳を手掛け、2012年に日本語版が発行されました。この訳書は日本におけるファンに長く親しまれています。

アンの家族

本作において、アン・ギルバート夫妻やその子供たちは各短編において名前がちょっとした噂として登場します。彼らが本格的に登場するのは、41の詩とそれに関連する家族の会話の場面のみです。年代は不明ですが、ジェム、ナン、リラの三人はすでに結婚しており、それぞれの家族を持つことで、アン・ギルバート夫妻は祖父母としての喜びを得ています。

• - ジェイムズ・マシュー・ブライス：フェイス・ブライスと結婚し、娘アン、息子ジェムとウォルターを儲けた。
• - アン・メレディス（旧姓：ブライス）：ジェリー・メレディスと嫁ぎ、娘ダイを持つ。
• - バーサ・マリラ・フォード（旧姓：ブライス）：ケネス・フォードと結婚し、息子ギルバートを儲けた。

物語の構成

本書の各部は独立したエピソードが並びつつも、全体を通してブライス一家の生活や成長の様子が描かれています。第一部では、特に戦前の平和で穏やかな日常が際立つ内容が展開され、第二部では戦争の影響を受けた人々や、時代の変化を迎える家庭の様子が描かれています。詩や会話を交えたストーリーテリングは、短編小説の枠を超えた新しい体験を読者に提供します。

記憶の中のアン

この作品には、アナログな家庭の雰囲気や、自然とのつながりが随所に表れており、モンゴメリ独特の優しさが豊かに表現されています。彼女の視点を通して、家族の絆や日常の小さな出来事の大切さが浮き彫りにされ、読者はアンというキャラクターを通じた深い感情を共有することができます。モンゴメリの遺した本作は、今もなお多くの人々に感動を与えており、彼女の作品世界への扉を開くものとなっています。

以上のように、『アンの想い出の日々』は、モンゴメリの集大成ともいえる作品であり、その深いメッセージは読者の心に長く残るでしょう。

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