アンギラ島の戦い

アンギラ島の戦い：1745年、カリブ海の攻防

アンギラ島の戦いは、1745年6月1日（グレゴリオ暦）に、カリブ海の英領アンギラ島で発生した戦闘です。当時、オーストリア継承戦争の余波を受け、カリブ海地域も戦火に見舞われていました。フランス軍がアンギラ島に侵攻を試みましたが、イギリス軍の抵抗に遭い、最終的に撤退を余儀なくされました。

背景：植民地間の緊張

1740年に勃発したオーストリア継承戦争は、ヨーロッパのみならず、インドやカリブ海といった植民地にも影響を及ぼしました。フランスとイギリスは、互いの輸送船団や植民地を攻撃目標とし、同時に自国の領土を守る必要に迫られていました。

1744年、イギリスはセントクリストファー島から民兵、奴隷、正規軍の混成部隊を派遣し、隣接するセント・マーチン島のフランス領を占領しました。この占領は1748年のアーヘンの和約まで続きました。これに対し、フランスは報復としてアンギラ島への侵攻を計画します。1745年5月末、ラ・トゥシェ大尉率いるフランス艦隊がマルティニーク島から出撃し、アンギラ島を目指しました。

アンギラ島では、イギリス軍がフランス軍の接近を察知し、駐留軍と民兵合わせて約150人を配置して待ち構えていました。

戦闘の経過：奇襲と反撃

5月21日の朝、フランス艦隊が突如として姿を現しました。艦隊は戦艦2隻（36門艦と32門艦）、私掠船3隻、そしてテンダーボートとして使用されたオランダ船2隻で構成されていました。ラ・トゥシェはランデヴー湾に兵士759人を上陸させることに成功しました。奇襲が成功し、フランス軍の士気は高まりましたが、数で劣るイギリス軍の士気は低下しました。

アンギラ副総督のアーサー・ホッジは、守備兵を3つの小隊に分け、胸墻の背後に配置しました。そして、フランス軍が射程距離に入るのを待ちました。リチャードソン大佐率いる正規軍22名からなる最初の小隊は、フランス軍が接近すると、規律を保ちつつ正確な射撃を開始し、フランス軍に大きな損害を与えました。フランス軍は数分で隊列を維持できなくなり、撤退を開始しました。他の小隊でも同様の状況が発生し、フランス軍は総崩れとなりました。

フランス軍がランデヴー湾に停泊している船へ撤退する際、イギリス軍は反撃に転じました。フランス兵は我先にと船に乗り込もうとし、パニック状態に陥りました。撤退は潰走に近い状態となりました。フランス艦隊が砲撃を開始すると、イギリス軍は追撃を中止し、捕虜の確保に専念しました。多くのフランス兵が船に乗り込もうとして溺死しました。

イギリス軍は翌日の攻撃を予想しましたが、フランス軍は甚大な損害を受けていたため、攻撃を断念し、マルティニーク島へと撤退しました。

戦いの後：損害と交渉

アンギラ島の戦いにおいて、フランス軍は少なくとも100人が戦死、溺死、または負傷し、50人が捕虜となりました。イギリス軍は35人の遺体を埋葬し、茂みに隠れているフランス兵（負傷者を含む）を捜索しました。戦死者の中には、ラ・トゥシェの副官、私掠船の艦長ロルー、サン・バルテルミー総督の息子など、数名の士官が含まれていました。

ラ・トゥシェは白旗を掲げた船をアンギラ島に派遣し、捕虜の返還と引き換えに食料、ワイン、補給物資の提供を提案しました。ラ・トゥシェ自身も腕と太腿に負傷を負っていました。

イギリス軍の損害は7名でしたが、フランス軍の旗2本、多数の火器、弾薬箱、手榴弾、旋回砲などを鹵獲しました。これらの戦利品は、アンギラ島の防衛に貢献した黒人たちに褒賞として与えられました。

もう一度検索