アングロ・カトリック

アングロ・カトリック：英国国教会におけるカトリック的伝統

アングロ・カトリック（Anglo-Catholicism）とは、英国国教会（イングランド国教会）内における、カトリック的伝統と独自の信仰性を強調する運動、信条、そして実践を指す言葉です。時に「英国国教会カトリック」や「カトリック聖公会主義」などとも呼ばれます。19世紀初頭にこの用語が生まれたものの、英国国教会内でカトリック的側面を重視する動きは、それ以前から存在していました。

アングロ・カトリック主義の歴史を語る上で欠かせないのが、17世紀のカロライン・ディバイン（Caroline Divines）と呼ばれる神学者たちの影響です。彼らの神学は、後のアングロ・カトリック運動の重要な基盤となりました。また、17世紀から18世紀にかけてのジャコバイト臣従宣誓拒否運動や、1833年にオックスフォード大学で始まったオックスフォード運動も、アングロ・カトリック主義の発展に大きな役割を果たしました。これらの運動は、英国国教会における「カトリックの復活」として知られる時代を特徴づけるものです。

アングロ・カトリック信徒の間には、様々な見解や実践が存在します。一部の信徒は、ローマ・カトリック教会とは明確に区別されながらも、教皇の首位を認める「教皇派」を自認しています。彼らは特にイングランドにおいて、第2バチカン公会議後の新しいミサ儀式に倣って典礼を執り行うことが多く、中にはローマ・カトリック教会への回帰を願う者もいます。また、教皇ベネディクト16世によって英国国教会信徒のために設けられた個人的典礼に参加する者も、非公式にはアングロ・カトリック信徒と呼ばれることがあります。

アングロ・カトリックの教会は、イギリス国内にとどまらず世界中に広がりを見せています。典礼様式、信条、実践は多様性を持ちますが、共通して英国国教会内でのカトリック的伝統の継承と発展を志向しています。

日本においては、東京都豊島区の立教学院諸聖徒礼拝堂が、その典礼にアングロ・カトリック的な要素を取り入れている教会として知られています。この礼拝堂では、復活祭、ペンテコステ、クリスマスといった主要な祝日には荘厳ミサが執り行われ、毎朝の聖餐式、そして毎週日曜日の歌による聖餐式も行われています。典礼面では、祭服や振り香炉、聖櫃といった伝統的な聖具の使用が見られます。これらの要素は、アングロ・カトリックの典礼の特徴をよく表しています。

アングロ・カトリック主義は、その歴史と多様な信徒、そして世界各地への広がりを通して、英国国教会内におけるカトリック的伝統の豊かな多様性を示す重要な存在です。その典礼や信仰実践は、英国国教会の歴史と信仰の深い理解に繋がる重要な要素と言えます。オックスフォード運動や39箇条（聖公会大綱）といった歴史的背景を理解することで、アングロ・カトリック主義のより深い理解が得られるでしょう。

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