アングン

アングン：インドネシアから世界へ羽ばたいた歌姫

アングン・シプタ・サースミ（Anggun Cipta Sasmi）。1974年4月29日、インドネシアの首都ジャカルタに生まれた彼女は、世界的に活躍するシンガーソングライターです。ジャワ人の作家である父と、ジョグジャカルタ王族の血を引く母を持つ彼女は、バリ語で「夢のような優美さ」を意味する名前を与えられました。

幼い頃から類まれな音楽的才能を示したアングンは、7歳から父親による厳しい歌のレッスンを受けました。母親は幼いアングンのマネージャーとなり、彼女の才能を世に広めるべく尽力しました。9歳で作曲を始め、子供向けアルバムを発表するなど、早くから音楽活動に携わっていたことが分かります。

10代の頃には、ボン・ジョヴィなどのロック音楽に影響を受けながら、自身の音楽性を磨いていきました。12歳で発表したデビューアルバム『Dunia Aku Punya』は、インドネシアのロック界の巨匠、イアン・アントノのプロデュースでしたが、商業的な成功には至りませんでした。しかし、その後発表したソフトロック調の楽曲『Mimpi』で人気を獲得し、1990年には大ヒット曲『Tua Tua Keladi』でインドネシア国内での地位を確立しました。

1992年、アングンはフランス人エンジニアと結婚。夫は後に彼女のマネージャーとなり、1993年には自身のレコード会社を設立。インドネシアで最後のアルバム『Anggun C. Sasmi... Lah!!!』を発表し、大きな成功を収めました。しかし、19歳頃には、インドネシアでの活動に限界を感じ始め、1994年、世界へと活動の場を移すことを決意します。

まずロンドンでの活動を模索しますが、思うような結果を得られず、夫の故郷であるフランスへ移住。そこで彼女は新たな挑戦を始めました。1996年、セリーヌ・ディオンなども手がけたプロデューサー、エリック・ベンジと出会います。ベンジはアングンの歌声と才能に魅了され、フランスでのアルバム制作が始まりました。

1997年、フランスでのデビューアルバム『Au nom de la lune』を発表。デビューシングル『La neige au Sahara』はフランスのシングルチャートで16位を記録し、大きな注目を集めました。アルバムも34位まで上昇し、アジア人アーティストとしては異例のヒットとなりました。この成功を受け、英語版『Snow on the Sahara』が制作され、世界33カ国でリリース。イタリアやスペインでもヒットを記録し、アングンはヨーロッパで広く知られる存在となりました。

その後も、フランス国内のみならず、世界中で楽曲を発表し続け、高い人気を維持しています。2002年にはデンマーク映画『しあわせな孤独』のサントラに参加。ディープ・フォレストやDJ Camなど、数々のアーティストとのコラボレーションも精力的に行っています。フランスでの長年の活動は高く評価され、2012年にはユーロビジョン・ソング・コンテストのフランス代表として参加しました。2015年からは、アジア版の『Got Talent』の審査員を務めるなど、その活動は多岐に渡っています。

私生活では、1992年から1999年までフランス人男性と、2004年から2006年までカナダ人男性と結婚。2006年にはフランス人作家と結婚し、2007年には女児を出産しましたが、2015年に離婚しています。

アングンは、インドネシア語、英語、フランス語のアルバムを数多く発表しており、彼女の幅広い音楽性と才能は、世界中の人々を魅了し続けています。インドネシアをルーツに持ちながら、世界を舞台に活躍する彼女のキャリアは、多くのアーティストにとって大きな刺激を与え続けていると言えるでしょう。彼女の音楽、そして彼女の人生は、まさに「夢のような優美さ」そのものです。

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