アンジェリク (小説)

アンジェリク ― 17世紀フランスを彩る、壮大な愛と陰謀の物語

アンジェリクは、フランスの作家アン・ゴロンが手がけた歴史小説シリーズです。17世紀のフランスを舞台に、貴族の女性アンジェリクの生涯を描いた大河ロマンとして知られています。ルイ14世の時代、華麗で陰謀渦巻く宮廷を背景に、アンジェリクは数々の困難や愛憎劇に巻き込まれながら、運命に抗い、生き抜いていきます。

物語の始まりと様々なバージョン

アン・ゴロンは、ヴェルサイユ宮殿近くに居住していた時期に、宮廷生活や歴史上の出来事をヒントにこの物語を構想したと言われています。1957年から執筆が開始され、当初は全13巻の大長編として発表されました（旧シリーズ）。その後、作者自身の意図と異なる改変が英語版に加えられていたことが判明し、アン・ゴロン自身の手によって大幅な改稿が行われ、より原作者の意図に沿った「完全版」（新シリーズ）が2009年以降に発表されています。

日本でも、旧シリーズは井上一夫氏による翻訳で1971年から刊行され、長年にわたって愛読されてきました。完全版は、フランス語版を底本とした翻訳で、より正確な歴史的描写や人物像が反映されています。ただし、完全版では、歴史上の人物もフランス語読みで表記されている場合があるため、注意が必要です（例えば、「マリー・チューダー」はメアリー1世、「ドン・ジョアン・ジョセ・ドートリッシュ」はフアン・ホセ・デ・アウストリアを指します）。

魅力的な登場人物たち

物語の中心人物は、緑色の瞳を持つ美しいアンジェリクです。彼女は、貧しいながらも気丈で、純粋な心を持ち、様々な困難に立ち向かっていきます。彼女の周りの人物も個性豊かで魅力的です。

アンジェリク: サンセ男爵の娘。持ち前の明るさと強さで数々の試練を乗り越える主人公。
ジョフレ・ド・ペイラック: アンジェリクの夫。ラングドックの伯爵で、容貌に難はあるものの、魅力的な人物。
ニコラ・メルロ: アンジェリクの幼馴染。森番の養子で、アンジェリクを支え続ける存在。
フィリップ・ミルモン・デュ・プレシ・ベリエール: アンジェリクの従兄弟。国王ルイ14世のお気に入りの元帥で、アンジェリクに淡い恋心を抱いている。
ルイ14世: フランス国王。実在のルイ14世がモデル。アンジェリクに魅了される。
その他: 海賊レスカトール、陰謀に関わる貴族たち、盗賊団のメンバーなど、個性豊かな登場人物が物語を彩ります。

波乱に満ちたストーリー

アンジェリクは、貧しい家のために、醜いながらも裕福なジョフレと結婚します。しかし、結婚後、二人は様々な陰謀や事件に巻き込まれていきます。ルイ14世の宮廷、宗教戦争の爪痕、そしてアルジェの海賊まで、アンジェリクの冒険はフランス全土、そして海外へと広がっていきます。愛、裏切り、復讐、そして赦し。様々な感情が渦巻く中で、アンジェリクは自分の運命を切り開いていくのです。彼女は、困難の中で成長し、真の強さと優しさを身につけていきます。

多様なメディア展開

アンジェリクは、小説だけでなく、映画や漫画、宝塚歌劇団による舞台作品など、様々なメディアで展開されています。それぞれの作品で、物語の解釈や表現が異なり、それぞれの魅力があります。特に、木原敏江氏による漫画版は、宮廷生活の様子を生き生きと描き、多くの読者を魅了しました。

歴史とフィクションの融合

アンジェリクは、史実をベースにしながら、フィクションを織り交ぜた作品です。フロンドの乱やピレネー条約といった歴史的事実が背景として描かれ、歴史に興味のある読者にとっても楽しめる作品となっています。しかし、フィクションと史実の区別を明確にすることで、より深い理解と臨場感を生み出しています。

アンジェリクは、壮大なスケールと魅力的な登場人物、そして波乱に満ちたストーリーで、多くの読者を魅了し続けている歴史小説です。時代を超えて愛されるこの物語は、これからも多くの人々に感動と興奮を与え続けることでしょう。

もう一度検索