アンジェリーク・キジョー

（Angélique Kidjo、1960年 7月14日 - ）は、西アフリカのベナン共和国コトヌー出身のシンガーソングライターであり、国連児童基金（ユニセフ）の親善大使も務めています。彼女の音楽は、故郷アフリカのリズムを基盤に、ソウル、レゲエ、ジャズ、ファンク、ポップといった多様なジャンルを巧みに織り交ぜた独自のスタイルを持ち、世界中の聴衆を魅了しています。

国際的な評価は非常に高く、音楽界最高峰の栄誉であるグラミー賞にはこれまでに4度ノミネートされ、受賞経験も複数回あります。また、英ガーディアン紙は彼女を「世界でもっとも啓発的な女性100人」の一人に選出するなど、その影響力は音楽の枠を超えています。英語、フランス語、ベナンの主要言語であるフォン語とヨルバ語を自在に操る能力は、彼女が持つ国境を超えた広いファン層を支える重要な要素となっています。

来歴

キジョーは、フォン族の父とヨルバ族の母のもとに生まれ、多様な文化が息づく環境で育ちました。幼少期からベナンの伝統音楽に親しみ、6歳からは母親が主宰する劇団に参加してパフォーマンスの基礎を学び、伝統音楽とダンスへの理解を深めました。学校ではバンド活動を始め、歌い手としての道を歩み始めます。この頃、国営ラジオを通して聴いた南アフリカ出身の伝説的な歌手、ミリアム・マケバから強い影響を受けました。

1983年、母国ベナンの不安定な政情を避けるため、彼女はフランスのパリへと移住します。パリではジャズを本格的に学び、その後の音楽性の幅を広げました。やがて活動の拠点を現在のニューヨークに移し、国際的なキャリアを本格化させていきました。

近年では、2021年に開催された東京オリンピックの開会式にも参加し、アレハンドロ・サンス、ジョン・レジェンド、キース・アーバンといった世界的アーティストと共に、ジョン・レノンの名曲「イマジン」の歌唱VTRに登場し、その歌声を世界に届けました。

人道支援活動

アンジェリーク・キジョーは、音楽活動と並行して、熱心な人道支援活動家としても知られています。特に、アフリカの女子教育の重要性を強く訴えており、この問題に取り組むため、2006年には自らNPO「バトンガ・ファンデーション（Batonga Foundation）」を設立しました。この財団は、アフリカの恵まれない環境にある女子たちが教育を受ける機会を得られるよう支援することを目的としており、彼女は財団の活動を通じて、若い女性たちのエンパワーメントに貢献しています。ユニセフ親善大使としても、世界中の子どもたちの権利向上と福祉のために積極的に活動しています。

ディスコグラフィ

アンジェリーク・キジョーは、キャリアを通じて数多くの優れたアルバムを発表しています。代表的な作品は以下の通りです。

- Pretty (1981年)
- Ewa Ka Djo (Let's Dance) (1985年)
- Parakou (1990年)
- 『ロゴゾ』 - Logozo (1991年)
- 『アエ』 - Ayé (1994年)
- Fifa (1996年)
- 『ヴードゥー・チャイルド』 - Oremi (1998年)
- Keep On Moving: The Best of Angelique Kidjo (2001年)
- 『ブラック・アイヴォリー・ソウル』 - Black Ivory Soul (2002年)
- 『OYAYA!』 - Oyaya! (2004年)
- 『ジン・ジン』 - Djin Djin (2007年)
- 『オヨ』 - Õÿö (2010年)
- Spirit Rising (2012年)
- 『イヴ』 - Eve (2014年)
- Sings with the Orchestre Philharmonique du Luxembourg (2015年)
- 『リメイン・イン・ライト』 - Remain in Light (2018年)
- 『セリア』 - Celia (2019年)
- Mother Nature (2021年)

彼女の音楽は、アフリカの伝統と現代的なサウンドが見事に融合しており、その力強くソウルフルな歌声は、世代や文化を超えて多くの人々にインスピレーションを与え続けています。音楽家として、そして人道支援者として、アンジェリーク・キジョーは世界にポジティブな影響を与え続ける稀有な存在です。

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