ミリアム・マケバ

ミリアム・マケバ：ママ・アフリカと呼ばれた歌姫

ミリアム・マケバ（Miriam Makeba、1932年3月4日 - 2008年11月10日）は、南アフリカ共和国出身の歌手であり、グラミー賞を受賞した、世界的に有名なアーティストです。「ママ・アフリカ」の愛称で親しまれ、その音楽と社会活動を通して、世界中の人々に影響を与えました。

生い立ちと音楽との出会い

1932年、ミリアム・マケバはヨハネスブルグで生まれました。母親はスワジ族の伝統的な神霊治療家であり、父親はコーサ族の出身でしたが、ミリアムが幼い頃に亡くなりました。生後間もなく、母親が地酒販売で逮捕され、刑務所で半年を過ごしたという、厳しい幼少期を送りました。その後、キルメルトン訓練学校の合唱部で音楽に触れ、才能を開花させていきます。

18歳の時には、娘のアンジェリカ・ボンギ・マケバを出産。最初の夫であるジェームズ・クバイとの間に生まれた子供でしたが、彼はマケバが乳がんと診断された後、彼女のもとを去りました。

プロとしてのキャリア

1950年代、マケバは南アフリカのジャズ・グループ、マンハッタン・ブラザーズのメインボーカルとしてプロデビューを果たします。その後、自身のグループ、ザ・スカイラークスを結成し、ジャズと伝統的な南アフリカ音楽を融合させた独自の音楽スタイルを確立しました。1959年にリリースしたシングル「Pata Pata」は南アフリカで大ヒットし、彼女の名は一躍知られるようになりました。

1959年には、ジャズ・ミュージカル『キング・コング』に出演し、成功を収めます。1964年から1966年までは、トランペット奏者のヒュー・マセケラと結婚していました。

反アパルトヘイト運動と国外追放

マケバは、アパルトヘイト（人種隔離政策）に反対する活動を積極的に行っていました。その結果、1967年に国外追放処分を受け、南アフリカへの帰国を禁じられました。しかし、彼女はアメリカに渡り、音楽活動を続けながら、アパルトヘイトの不当性を訴え続けました。同年、アメリカで再レコーディングした「Pata Pata」は、全米12位を記録する大ヒットとなりました。

ギニアでの生活と晩年

1969年、マケバはギニアのセク・トゥーレ大統領に招かれ、活動家のストークリー・カーマイケルと共にギニアに移住しました。大統領の支援を受け、カンテット・ギネエンヌと共に演奏活動を行いました。その後も、ヨーロッパを中心に世界中でコンサートを行い、その力強い歌声で多くの人々を魅了しました。

2008年11月10日、イタリアでのコンサート中に舞台上で倒れ、息を引き取りました。76歳でした。

遺産

ミリアム・マケバは、その音楽を通して、アパルトヘイトに反対し、自由と平等を訴え続けた偉大なアーティストでした。彼女の歌は、今もなお世界中の人々に愛され、勇気を与え続けています。

彼女の代表作としては、「Pata Pata」の他に、ハリー・ベラフォンテとの共演アルバム『アフリカの歌』などがあります。また、数多くのライブ・アルバムやコンピレーション・アルバムもリリースされており、彼女の音楽の軌跡を辿ることができます。

ミリアム・マケバは、音楽を通して世界を変えようとした、真のアーティストでした。

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