アンジェロ・ポリツィアーノ

アンジェロ・ポリツィアーノ（1454年7月14日 - 1494年9月29日）は、ルネサンス期イタリアの人文主義者、詩人として名を残しました。本名をアンジェロ・アンブロジーニといい、ポリツィアーノという通称は、彼の故郷であるモンテプルチャーノのラテン語名（モンス・ポリティアヌス）に由来します。

生涯

ポリツィアーノは、トスカーナ地方のモンテプルチャーノで生まれました。早くに孤児となり、貧困の中で育ちましたが、その才能は埋もれることなく、フィレンツェで人文主義者のクリストフォロ・ランディーノに見出され、師事することになります。その才能は瞬く間に開花し、フィレンツェの支配者であったメディチ家の当主、ロレンツォ・デ・メディチの目に留まり、秘書として仕えることとなりました。同時に、ロレンツォに詩作を教え、その長男ピエロの家庭教師も務めました。

ポリツィアーノは、メディチ家にとって単なる秘書や教師以上の存在でした。1478年に発生したパッツィ家の陰謀の際には、ロレンツォを危険から救い、命を救ったと伝えられています。彼の機転と行動力が、メディチ家の命運を左右したと言えるでしょう。

また、ポリツィアーノは語学に長けており、20歳という若さでホメロスの叙事詩『イーリアス』をラテン語に翻訳するという偉業を成し遂げています。これは、彼の並外れた語学力と古典に対する深い理解を示すものです。

詩人としてのポリツィアーノもまた、非常に高く評価されています。代表作としては、『騎馬槍試合のスタンツェ』が挙げられます。この作品は、ロレンツォ・デ・メディチの治世を賛美する内容であり、ルネサンス期の華やかな宮廷文化を色鮮やかに描き出しています。彼の詩は、同時代の芸術家たちにも大きな影響を与えました。サンドロ・ボッティチェリの絵画作品『春』は、ポリツィアーノの詩に構想を得ているという説が有力です。

ポリツィアーノは、1494年に40歳の若さでこの世を去りましたが、その短い生涯の中で、人文主義、詩、教育など、多岐にわたる分野で輝かしい業績を残しました。彼は、ルネサンス期における人文主義の精神を体現した人物の一人として、後世に語り継がれています。

日本語訳

* アンジェロ・ポリツィアーノ『シルウァエ』 沓掛良彦 訳、月曜社「シリーズ・古典転生」、2023年12月。ISBN 978-4865031782

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