アンソニー・ムーア

アンソニー・ムーア：実験音楽の探求者

アンソニー・ムーア（Anthony Moore, 1948年8月13日 - ）は、イギリスが生んだ実験音楽の作曲家、演奏家、そして音楽プロデューサーです。彼は、アヴァンギャルド・ポップ・トリオ、スラップ・ハッピーの創設メンバーとしてそのキャリアをスタートさせ、ヘンリー・カウとのコラボレーションを経て、数多くのソロアルバムを発表してきました。また、作詞家としてもピンク・フロイドのアルバムに参加するなど、幅広い分野でその才能を発揮しています。

スラップ・ハッピーとヘンリー・カウ

ムーアは、学生時代にピーター・ブレグヴァドと出会い、共にスラップ・ハッピーを結成しました。1971年にはドイツのハンブルクに移り、実験音楽シーンで活動を開始。そこで、ダグマー・クラウゼを加え、スラップ・ハッピーはアヴァン・ポップ・トリオとして本格的に始動しました。彼らはクラウトロック・グループ、ファウストをバックバンドに迎え、アルバムを制作しましたが、セカンドアルバムがレコード会社に拒否されたことをきっかけにロンドンへ拠点を移しました。その後、ヴァージン・レコードと契約し、アルバムをリリース。1974年には前衛グループ、ヘンリー・カウと合併し、2枚のアルバムを制作しましたが、音楽性の違いから短期間で解散しました。

ソロキャリアとピンク・フロイドとの共作

ヘンリー・カウ/スラップ・ハッピーを脱退後、ムーアはソロアーティストとしての活動を再開しました。1977年にはヴァージン・レコードからアルバム『アウト』をリリースしましたが、商業的な成功には至らず、契約は打ち切られました。その後、独立レーベルからアルバムを発表し、高い評価を得ました。また、彼は作詞家としても才能を発揮し、ピンク・フロイドのアルバム『鬱』と『対/TSUI』でコラボレーションを行いました。さらに、リチャード・ライトのソロアルバムや、ケヴィン・エアーズ、トレヴァー・ラビン、ジュリアン・レノンといったアーティストの作品にも歌詞を提供しています。

教育者としての活動

ムーアは、音楽家としての活動に加えて、教育者としても貢献しています。1996年には、ドイツのケルンにあるケルン・メディア芸術大学で教授に就任し、ニューメディアにおける音と音楽の研究を行いました。2000年から2004年までの間は、同大学の校長を務め、後進の育成に尽力しました。また、ヨーロッパ各地で音と音楽に関する講演を行うなど、その知識と経験を広く共有しています。

近年の活動

近年では、イェルク・リンデンマイヤー、ペーター・C・サイモンと共に音楽トリオ「LMS」を結成し、ヨーロッパ各地で演奏活動を行いました。また、2016年にはスラップ・ハッピーを再結成し、ドイツのケルンで開催されたウィークエンド・フェスティバルでファウストと共演。2017年にはロンドンや東京でも公演を行いました。

アンソニー・ムーアは、常に新しい音楽の可能性を追求し、実験的な試みを続けている音楽家です。彼の作品は、聴く人に新たな発見と刺激を与え、音楽の奥深さを教えてくれます。

ディスコグラフィー

ソロ・アルバム
『ピーシズ・フロム・ザ・クラウドランド・ボールルーム』 - Pieces from the Cloudland Ballroom (1971年)
『リード・ウィッスル&スティックス』 - Reed Whistle and Sticks (1972年)
『シークレット・オヴ・ザ・ブルー・バッグ』 - Secrets of the Blue Bag (1972年)
『アウト』 - Out (1976年)
『フライング・ダズント・ヘルプ』 - Flying Doesn't Help (1979年)
『ワールド・サーヴィス』 - World Service (1981年)
『ジ・オンリー・チョイス』 - The Only Choice (1984年)
Arp & Anthony Moore (2010年)
The Present Is Missing (2016年)
Ore Talks (2017年)
Arithmetic in the Dark (2019年)
The April Sessions (2021年)
スラップ・ハッピー
『ソート・オヴ』 - Sort Of (1972年)
『カサブランカ・ムーン』 - Casablanca Moon (1974年)
『スラップハッピィ・オア・スラップハッピィ（アクナルバサック・ヌーン）』 - Acnalbasac Noom (1980年)
『サ・ヴァ』 - Ça Va (1998年)
『キャメラ』 - Camera (2000年)
『Live in Japan - May, 2000』 - Live in Japan (2001年)
スラップ・ハッピー&ヘンリー・カウ
『悲しみのヨーロッパ』 - Desperate Straights (1975年)
* 『傾向賛美』 - In Praise of Learning (1975年)

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