アンティポディーズ諸島

アンティポデス諸島：絶海の孤島に息づく自然

アンティポデス諸島は、ニュージーランド南方の亜南極に位置する火山島群です。スチュアート島の東南東約860km、バウンティ諸島の南約215kmに位置し、文字通り地球の裏側にあたる水半球の中心付近に存在します。最大の島であるアンティポデス島（約20km²）をはじめ、ボロンズ島（約2km²）など大小さまざまな島や岩礁で構成されています。最高峰はギャロウェイ山の標高366mです。

名前の由来

「アンティポデス」とは、「対蹠地」を意味する言葉です。この島々は、かつてイギリス・ロンドンの対蹠地に近いと誤解されたため、この名が付けられました。実際には、フランス北部のシェルブール近郊が対蹠地にあたります。しかし、アンティポデス諸島がロンドンから最も遠い陸地であることに変わりはありません。

歴史

前史

1886年、アンティポデス島で約75cmの陶器の破片が発見されました。これは、ヨーロッパ人が到達する以前に、人類がこの島に渡来していた可能性を示唆しています。この貴重な遺物は、現在ウェリントンのニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワに所蔵されています。

オットセイ狩りの時代

19世紀初頭、アンティポデス諸島はオットセイ狩りの拠点となりました。1803年には、ジョージ・バスがこの海域での漁業独占権を得て、多くのオットセイが乱獲されました。1805年から1807年にかけてオットセイ狩猟はピークを迎え、その皮は中国で高値で取引されました。アメリカとイギリスの商人たちは、莫大な利益を巡って争ったと伝えられています。

難破船の悲劇

アンティポデス諸島の周辺海域は、難破事故が多発する場所でもありました。1893年には、スプリット・オブ・ザ・ドーン号が座礁し、乗組員16名のうち11名がアンティポデス島に漂着しました。彼らは3か月近く、過酷な環境の中で生き延びるために、貝類や植物の根、ミズナギドリなどを食料としていました。最終的には、ニュージーランド政府の船によって救助されました。

島には遭難者用の避難所が設けられていますが、発見が困難な場所に位置しています。1908年には、アンカレッジ湾で沈没した船の乗組員がこの避難所を利用しました。1999年にはヨット船が沈没し、2名の犠牲者が出ています。

自然

アンティポデス諸島は、独自の生態系を育んでいます。固有種の動植物が数多く生息しており、その中でもムジアオハシインコ、アンティポデスアホウドリ、シュレーターペンギンは特に貴重な存在です。シュレーターペンギンは、世界の生息数の半分がこの島に集中しています。

また、亜南極の厳しい環境に適応したメガハーブと呼ばれる巨大な植物群落も、この島の大きな特徴です。

世界遺産と環境保護

アンティポデス諸島の独特な生態系は、1998年にユネスコの世界遺産「ニュージーランドの亜南極諸島」の一部として登録されました。

かつては、難破船などによって持ち込まれたネズミが繁殖し、鳥類の卵や雛を捕食する深刻な問題が発生していました。しかし、2016年に大規模な駆除作戦が行われ、2018年の調査でネズミの根絶が確認されました。これにより、生態系の回復が期待されています。

アンティポデス諸島は、その特異な自然環境と歴史的背景から、学術的にも文化的にも重要な価値を持つ島々です。一般の立ち入りは制限されていますが、その保護と研究の重要性はますます高まっています。

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