アンティマケー

アンティマケー（古希: Ἀντιμάχη, Antimachē）は、古代ギリシャ神話に登場する女性である。長音を省略したアンティマケという表記も用いられる。彼女は、その出生と結婚を通じて、ギリシャ神話における重要な家系と結びつく人物として名を残している。

彼女は、アルカディアー地方において王族の家系に属したアムピダマースの娘として生まれた。伝承によれば、アンティマケーにはメラニオーンという名の兄弟がいたとされる。

アンティマケーは、ミュケーナイおよびティリュンスを支配した強力な王、エウリュステウスと結婚した。エウリュステウスは、最大の英雄ヘラクレスに不可能とも思える数々の難業、いわゆる「十二の功業」を課した人物として広く知られている。アンティマケーは夫エウリュステウスとの間に多くの子をもうけた。神話伝承によると、彼らの間には五人の息子と一人の娘が生まれた。息子たちの名は、アレクサンドロス、イーピメドーン、エウリュビオス、メントール、そしてペリメーデースとして記録されている。娘はアドメーテーという名であった。これらの子どもたちは、ミュケーナイ王家の次世代を担う存在であった。

しかし、アンティマケーの家族は壮絶な悲劇に見舞われることになる。ヘラクレスがこの世を去った後、その子孫であるヘラクレイダイは、エウリュステウスによる執拗な迫害から逃れるため、故郷を追われ、ギリシャ各地をさまよった。彼らは最終的に、民主的なポリスとして知られるアテナイに亡命を求めた。アテナイは彼らを保護することを決め、エウリュステウスからの引き渡し要求を断固として拒否した。このアテナイの行動に激怒したエウリュステウスは、大軍を組織してアテナイへと進攻した。神話に語られるこの戦いは、ヘラクレイダイがアテナイの庇護のもと、エウリュステウスの勢力と対決した歴史的な出来事として描かれる。

この戦いの結果は、アンティマケーの家族にとって壊滅的なものであった。アテナイ軍との激しい戦闘の末、夫であるエウリュステウス王は戦場で命を落とした。さらに、アンティマケーが産んだ五人の息子たち、アレクサンドロス、イーピメドーン、エウリュビオス、メントール、ペリメーデースもまた、全員がこの戦いの中で討ち死にしたと伝えられている。娘のアドメーテーのその後の運命については、この伝承の中で明確には語られていない場合が多い。

アンティマケー自身が、夫と息子たちすべてを一度に失った後にどのような生涯を送ったのか、あるいは彼女自身の性格や行動に関する詳しいエピソードは、現存する古代の文献にはほとんど見られない。彼女の名は、主にその出自と結婚、そして何よりも、夫と息子たちがヘラクレイダイとの戦いにおいて迎えた悲劇的な最期という出来事と強く結びついて記憶されている。彼女は、ミュケーナイ王家の血筋を次代へ繋ぐ役割を担った女性であり、その家族が神話上の重要な争乱の中で滅びゆく様を見守る（あるいはその報せを受ける）立場にあった人物として、わずかな記述ながらもその存在が神話の系譜の中に記されているのである。

もう一度検索