アンティ・トルマネン

アンティ・トルマネン：フィンランドが生んだ異色の囲碁棋士

アンティ・トルマネン（Antti Törmänen）は、1989年生まれのフィンランド人囲碁棋士で、日本棋院東京本院に所属しています。北ポフヤンマー県オウル市出身で、小林千寿六段門下として研鑽を積んでいます。

『ヒカルの碁』との出会い、そして囲碁の世界へ

12歳の頃、人気漫画『ヒカルの碁』を読んだことがきっかけで囲碁に興味を持ちました。地元の囲碁クラブに通い始め、ヨーロッパ各地のアマチュア棋戦で100回以上出場を重ね、実力を磨きました。主な実績として、世界青少年囲碁選手権大会5位、フィンランド選手権優勝3回、ロンドン碁コングレス優勝、ヨーロッパ碁コングレス早碁トーナメント優勝、同コングレスオープン部門準優勝などがあります。

日本への留学、プロへの道

フィンランドの大学在学中には、中国人の友人に誘われて北京に短期留学し、中国の囲碁レベルの高さを痛感。ヨーロッパを離れて囲碁を学ぶことを決意します。2011年に来日し、日本棋院の院生となりました。一時帰国して大学を卒業後、2014年に再び来日。小林千寿門下として、プロ棋士を目指し本格的に囲碁の勉強に励みました。

2015年、日本棋院冬季棋士採用試験において、院生序列により本戦から出場し、8勝7敗の成績を収めました。勝ち越しを決めたことで、外国籍特別採用棋士として採用が決定し、2016年4月に入段を果たしました。ヨーロッパ出身の棋士が日本棋院に所属するのは、ハンス・ピーチ以来19年ぶりの快挙でした。

山形県での活動、そして国際的な視野

2020年には、妻である生田慶穂が山形大学の准教授に就任したことに伴い、山形県に転居しました。現在は山形県を拠点に、囲碁の指導や普及活動に力を入れています。入段後は、国内外の棋戦に出場する傍ら、海外での普及活動や翻訳活動も積極的に行っています。

語学堪能な国際派棋士

フィンランド語に加え、英語、ドイツ語など6か国語を操る語学力を持っています。来日当初は挨拶程度の日本語しか話せませんでしたが、入段決定時には漢字も読めるようになり、敬語も流暢に使えるようになりました。

今後の目標として、まずは三段まで昇段すること、そして囲碁の普及を掲げています。アマチュアへの指導や、英語の囲碁書籍の執筆にも意欲を見せています。

親族

1980年のレークプラシッドオリンピックのスキージャンプ90m級で金メダルを獲得したユーコ・トルマネンは伯父にあたります。プロ棋士という特殊な世界で生きることを決めたアンティに対し、両親は深く理解を示してくれたそうです。

好きな棋士として、高川格、本因坊秀栄、武宮正樹を挙げています。

著書

* Invisible: The Games of AlphaGo（Hebsacker Verlag, 2017年）

アンティ・トルマネンは、国際的な視野と語学力を生かし、囲碁の普及に貢献する、これからの活躍が期待される棋士です。

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