アントニオ・ピガフェッタ

アントニオ・ピガフェッタ（1491年 - 1534年）は、イタリアの航海者で、フェルディナンド・マゼランによる世界周航に同行し、詳細な記録を残しました。彼の記録は、マゼランの航海に関する主要な情報源としてだけでなく、当時の南アメリカや太平洋諸島の様子を知る上で貴重な資料となっています。

前半生

ピガフェッタは、ヴェネツィア共和国（当時）の都市ヴィチェンツァの裕福な家庭に生まれました。天文学、地理学、地図学を学び、16世紀初頭には聖ヨハネ騎士団のガレー船で働いていました。1519年、教皇使節フランチェスコ・キエレガーティのスペイン行きに随行しました。

マゼラン遠征隊への参加

セビリアでマゼランの航海計画を知ったピガフェッタは、乗客として同行を交渉し、最終的に通訳兼地図製作者として参加することになりました。航海中、彼は訪れた場所の地理、気候、植物、動物、住民について詳細な記録を取り続けました。これらの記録は、ヨーロッパで出版され、後の探検家や地図製作者にとって貴重な情報源となりました。

ピガフェッタは、航海中に日付のずれを経験した最初の人物の一人でもあります。世界一周達成直前にヴェルデ岬諸島に立ち寄った際、彼の記録と現地の曜日が1日ずれていることに気づき、地球を一周することによる日付の変更を実感しました。

帰還

マゼランはフィリピンのマクタン島で戦死しましたが、ピガフェッタも負傷しながらも戦地を脱出し、フアン・セバスティアン・エルカーノの指揮下でビクトリア号に乗り、スペインに帰還した18人の乗組員の1人となりました。1522年9月、スペイン出発から3年後、ビクトリア号はサンルーカル・デ・バラメーダに到着し、ピガフェッタはイタリアへ帰国しました。

彼はローマ教皇に謁見し、航海の体験を『マガリャンイス最初の世界一周航海』として記録しました。この記録は、様々な形で出版され、ヨーロッパに広まりましたが、完全な形で出版されたのは18世紀後半になってからです。ヨーロッパ人が世界周航を知ったのは、ピガフェッタの著作だけでなく、マゼラン艦隊の生存者への聞き取り調査を基にした著作も参考にしていました。

帰国後、ピガフェッタはかつて所属していた聖ヨハネ騎士団の一員となり、1534年に故郷ヴィチェンツァで亡くなりました。

著作

ピガフェッタの記録は、詳細な記述と貴重な情報を含み、現代でも研究されています。日本語訳は岩波文庫『マゼラン最初の世界一周航海』などで読むことができます。

映画におけるピガフェッタ

ピガフェッタは、映画の中でも描かれています。2002年の映画『ラプ＝ラプ』や、キドラット・タヒミック監督の「500年の航海」(2017)に登場します。

ピガフェッタの記録は、マゼランの航海だけでなく、16世紀初頭の世界の姿を今に伝える貴重な遺産です。

もう一度検索