聖ヨハネ騎士団

聖ヨハネ騎士団の歴史と変遷

聖ヨハネ騎士団は11世紀に設立された宗教騎士団で、テンプル騎士団やドイツ騎士団と並び、中世ヨーロッパの三大騎士修道会の一つに位置付けられています。この団体は本来、聖地を訪れるキリスト教徒の保護を目的としており、後には聖地防衛の要としても活躍しました。彼らは「ホスピタル騎士団」とも呼ばれ、本拠地の移動に従いロドス騎士団、さらにはマルタ騎士団と称されるようになりました。現在、正式な名称は「エルサレム、ロードス及びマルタにおける聖ヨハネ主権軍事病院騎士修道会」であり、一般的には「マルタ騎士団」として知られています。

設立と初期の活動

聖ヨハネ騎士団の成立は1023年頃に遡ります。アマルフィの商人たちがエルサレムにおいて病院を兼ねた宿泊所を開設したことが始まりです。特に第1回十字軍後、プロヴァンス出身のジェラールは、1113年に教皇パスカリス2世から正式に騎士修道会として承認を受けました。この騎士団は徐々に軍事的な役割を強化していきますが、当初は病院としての機能を維持し、最大で2,000人が収容できる病院や宿泊施設を運営していました。また、騎士団のメンバーは平時には医療奉仕が求められ、結婚は禁じられていたため、入団は大変な名誉である一方、厳しい制約がありました。

この団体は十字軍国家の防衛に重要な役割を果たし、2つの大要塞と140の砦を守っていました。しかし、1187年のエルサレム陥落以後、キプロスへの撤退を余儀なくされ、海軍活動を行うも、1309年にロドス島を奪取し、そこに本拠を移しました。これに伴い、彼らは「ロドス騎士団」と名乗るようになりました。

ロドス騎士団

1312年、テンプル騎士団の資産が没収された際、多くが聖ヨハネ騎士団に引き渡されました。これにより、彼らは唯一の主要な騎士修道会として地位を確立し、西ヨーロッパからの寄付を受けるようになりました。組織は約500人の騎士と8つの騎士館グループから構成され、騎士館ごとに指導者が存在しました。

騎士団は、1444年にはマムルーク朝の攻撃、1480年にはオスマン帝国のメフメト2世の襲撃を撃退し、一時的にその名声を高めました。しかし、1522年にはスレイマン1世率いるオスマン軍に攻撃され、ついにはロドス島を明け渡しました。

マルタ騎士団

ロドス島を失った後、騎士団は教皇や神聖ローマ皇帝の助けを借りて、シチリア王からマルタ島を借り受けることになりました。マルタ島では、依然としてイスラーム勢力やヴェネツィアのユダヤ人に対する海賊行為を行い、地域の権力を維持しました。1565年には再びオスマン帝国の大軍に襲われましたが、スペインの救援とオスマン軍の指導者の死によって防衛に成功しました。その際、騎士団の指導者ジャン・ド・ラ・ヴァレットに名を由来したヴァレッタ港が設立され、以降重要な拠点となりました。

しかし、16世紀の宗教改革の影響で騎士団の勢力は失われ、17世紀にはロシア海軍やフランス海軍に組み込まれることも多くなりました。1798年にナポレオンがマルタ島を占領すると、彼らはロシア帝国を求め、1801年に皇帝を騎士団総長に迎えますが、その後の求心力は失われ、1834年にはローマに本部を移すこととなります。

現代の聖ヨハネ騎士団

このように、聖ヨハネ騎士団は多くの変遷を経て現在も活動を続けていますが、その力や存在意義は時代とともに変化してきました。長い歴史の中で、彼らは宗教的な使命を果たしつつ、様々な地域や文化の中で独自の役割を果たしてきたのです。今日では、社会福祉活動や医療支援にも力を入れており、歴史的な背景を持ちながらも現代のニーズに応じた活動を展開しています。

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