アントワーヌ・ピネー

アントワーヌ・ピネー：フランスの保守政治家、首相としての足跡

アントワーヌ・ピネー（1891年12月30日 - 1994年12月13日）は、フランスの政治家であり、右派（保守）の代表的人物として知られています。彼はヴァンサン・オリオール政権下で閣僚評議会議長（首相）を務め、戦後のフランス政界において特異な存在感を示しました。首相経験者としては最長寿を誇り、その生涯は102年に及びました。

生涯と初期の経歴

ピネーは1891年にローヌ県サン＝サンフォリアン＝シュル＝ソーヌで生まれました。第一次世界大戦に従軍し、戦傷によって右腕に障害が残りました。戦後は家業の小さななめし皮工場を経営する傍ら、1929年にはローヌ県サン・シャモン市長に当選し、政治家としてのキャリアをスタートさせました。1936年にはロワール県からフランス国民議会総選挙に立候補し、当選を果たしました。

第二次世界大戦中、ピネーはヴィシー政権の全国評議会評議員に任命されたため、戦後一時的に被選挙権を剥奪されました。しかし、戦後のフランス政界において、彼は右派（保守）政党の結成に尽力し、全国独立主義者農民センター（CNIP）を結成しました。1950年には公共事業・運輸・観光相として初入閣し、政界での地位を確立しました。

首相としての役割

1951年の総選挙後、ルネ・プレヴァン、エドガー・フォール両内閣が短命に終わる中、ヴァンサン・オリオール大統領はフランス社会党（SFIO）を中心とする組閣を断念し、1952年3月にピネーを首相に指名しました。当時、ピネーは比較的知名度が低い政治家でしたが、広範な党派の同意を得て組閣に成功しました。ピネー内閣の成立は右派の復権と見なされ、ジョルジュ・ボネ元外務大臣など、戦前の対独融和主義者が復権しました。

ピネー内閣は、「ピネー神話」と言われるように、フランス経済に好況をもたらしたとされていますが、実際の経済浮揚はピネー退陣後であったという見方もあります。内閣は、国内のインフレーション、第一次インドシナ戦争の継続、アメリカの軍備拡張要求による財政赤字に苦しみ、北アフリカの独立運動も活発化していきました。1952年12月、1953年度予算案が議会を通過しなかったため、ピネー内閣は総辞職しました。

その後の政治活動と晩年

1958年にアルジェリア危機が深刻化すると、ピネーはド・ゴールを支持し、ド・ゴール内閣の財務大臣に就任しました。彼は1994年12月13日に死去し、103歳の誕生日を目前に控えていました。

アントワーヌ・ピネーは、フランスの政治史において、保守派のリーダーとして重要な役割を果たしました。彼の首相としての短い期間は、経済政策や植民地問題など、多くの課題に直面しましたが、その政治手腕と信念は、後の世代にも影響を与え続けています。

まとめ

アントワーヌ・ピネーは、激動の時代を生きたフランスの政治家であり、右派の立場からフランスの政治と経済に貢献しました。彼の首相としての業績は、今日でも評価の対象となっています。

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