アント人

アント人とは：歴史と民族

アント人（Antes）は、6世紀頃にドニプロ川中流域からローシ川にかけて居住していたスラヴ民族です。

歴史

歴史家のヨルダネスによれば、アント人はヴェネド人（ヴェンド人）、スクラヴ人（スラヴ人）らと共に、後のスラヴ系民族を構成する集団の一つとして認識されていました。6世紀当時、地中海沿岸地域では、スラヴ語派の人々として、以下の3つの集団が区別されていました。

ヴェンド人： オーデル川からヴィスワ川にかけて居住。
スラヴ人： ヴィスワ川以東、または以南に居住。
アント人： 現在のウクライナ方面に居住。

これらの集団は類似した言語（スラヴ語派）を話していたため、中世に入ると、地中海世界との接触が最も多かった「スラヴ人」（スクラヴェン）の名で総称されるようになりました。

518年以降、アント人は東ローマ帝国領に侵入し、バルカン半島のスラヴ化を推し進めました。しかし、560年以降は西進してきたトルコ系民族のアヴァール人に圧迫され、602年以降の史料にはその名が見られなくなります。アント人はスラヴ人として同化し、独自の呼称は用いられなくなったと考えられています。

アント人の言語

アント人は、スラヴ語派に属する言語を話していました。これは、ヴェンド人やスラヴ人と共通しています。

アント人は、その後のスラヴ民族の形成に大きな影響を与えたと考えられています。彼らの歴史は、スラヴ民族の起源を理解する上で重要な鍵となります。

参考資料

阿部重雄「アント人の種族同盟の基礎」『社会経済史学』第18巻第4号、社会経済史学会、1952年、340-352頁
大井洋輔, "И. Я. Фроянов, Рабство и данничество у восточныx славян(VI-Xвв), СПб., 1996. 512с." 『西洋史論集』 北海道大学文学部西洋史研究室 4巻, p.129-136, 2001年
ロシア人の起源

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