アンドリュー・マカロック

アンドリュー・マカロック：音海の旅人

1945年11月19日、イングランドのボーンマスに生を受けたアンドリュー・マカロックは、ロック・ドラマーとして名を馳せた後、海洋スポーツ指導者、実業家へと転身するという、極めて稀な経歴を持つ人物です。

海洋エンジニアだった父親の影響もあり、幼少期から青年期にかけて、カナダ、香港、日本といった海外で過ごしました。英国に帰国した1960年代初頭からは、インディゴズをはじめとするバンドでの音楽活動に勤しむ傍ら、ボート競技にも情熱を傾けます。1968年8月にはシャイ・リムズを結成し、翌1969年5月にレコードデビューを果たします。ロンドンのクラブシーンで活動する中で、彼は後にキング・クリムゾンで活動を共にするロバート・フリップやグレッグ・レイクとの出会いを果たし、レイクはシャイ・リムズのセカンドシングルのレコーディングにも参加しています。

1970年、当時彼に住居を提供していたキース・エマーソンからの紹介がきっかけとなり、アンドリュー・マカロックはキング・クリムゾンへ加入しました。マイケル・ジャイルズの後任として迎えられ、バンドにとってサードアルバムとなる『リザード』の制作に貢献します。彼は1969年のデビュー当時からキング・クリムゾンを知っており、特にジャイルズのドラミングには敬意を抱いていました。しかし、『リザード』完成後のライブリハーサル初日、ボーカルとベースを担当していたゴードン・ハスケルがリーダーであるフリップとの意見の相違からバンドを脱退してしまう事態が発生します。この影響で、1971年1月から予定されていたライブツアーは中止となり、マカロックもわずか数ヶ月でキング・クリムゾンから離れることになりました。

クリムゾン脱退後も、彼の音楽キャリアは続きます。フリップの紹介を受けてアーサー・ブラウンズ・キングダム・カムに短期間参加しますが、イタリア公演以降はほとんど活動機会に恵まれませんでした。再びフリップの計らいで、元レア・バードのキーボーディスト、グラハム・フィールドと出会います。そして、1960年代末にルームメイトだった旧知の仲であるベーシスト/ギタリスト/ボーカリストのアラン・バリーを仲間に加え、1971年秋にはキーボード・トリオ、フィールズを結成します。フィールズはアルバムを1枚リリースしましたが、1972年には解散しました。

1972年秋には、元コロシアムのキーボーディストであるデイヴ・グリーンスレードらと共に、ツイン・キーボード編成のバンド、グリーンスレードを結成します。このバンドでは比較的長く活動し、スタジオアルバムを4枚発表するなど成功を収めますが、1976年に解散。その後は、ツアーケースの販売事業を手がける一方で、ピーター・バンクス、ダンカン・マッケイ、アンソニー・フィリップスといったミュージシャン達とのセッションにも参加していましたが、やがて音楽の世界から身を引くことになります。

1980年、アンドリュー・マカロックは英国王立ヨット協会のRYA ヨットマスター資格を取得し、第二の人生を歩み始めます。ロンドンを拠点にヨット指導者として活動し、オリンピック候補選手のコーチングにもあたっています。また、自身の会社であるマカロック・トラベル社の観光ヨット船では、夏季にはトルコ周辺海域で船長を務めるなど、実業家としても活躍しています。

音楽業界を離れて久しい彼ですが、2018年1月にはロンドン・ボート・ショーのトークイベントに登壇し、「元ロック・ドラマー」として紹介される一幕もありました。ロックミュージックの歴史にその名を刻みつつ、現在は広大な海の上で新たなキャリアを築いているアンドリュー・マカロック。その波乱に富んだ人生は、多くの人々にインスピレーションを与えています。

主なディスコグラフィ

正式メンバーとしての参加作品

シャイ・リムズ
`Reputation / Love` (シングル, 1969年) ※B面にロバート・フリップ、グレッグ・レイク参加
`Lady In Black / Trick Or Two` (シングル, 1969年)
キング・クリムゾン
`Lizard` (1970年)
フィールズ
`Fields` (1971年)
`Contrasts: Urban Roar To Country Peace` (未発表セカンドアルバム, 録音1972年, リリース2015年)
グリーンスレード
`Greenslade` (1973年)
`Bedside Manners Are Extra` (1973年)
`Spyglass Guest` (1974年)
`Time And Tide` (1975年)
`Live 1973-1975` (ライブアルバム, 1999年)
`Live In Stockholm March 10, 1975` (ライブアルバム, 2013年)

セッション参加作品（一部抜粋）

マンフレッド・マン・チャプター・スリー
`Volume Two` (1970年) ※1曲のみ
ディーク・レオナルド
`Diamond Road / Turning In Circles` (シングル, 1973年)
ランゾン＆ハズバンド
`Nostalgia` (1975年) ※1曲のみ
ギター・ワークショップ（オムニバス）
`Volume Two` (1976年) ※ピーター・バンクス演奏の2曲に参加
ダンカン・マッケイ
`Score` (1977年)
アンソニー・フィリップス
`Private Parts & Pieces II: Back To The Pavilion` (1980年)
ロンドン・フィルハーモニック・オーケストラ
`Opus One` (1980年)
レイ・ベネット
* `Angels & Ghosts` (2001年) ※1975年、1976年の録音2曲に参加

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