マイケル・ジャイルズ

マイケル・ジャイルズ：キング・クリムゾンの創始者、その音楽的軌跡

マイケル・ジャイルズ（Michael Rex Giles, 1942年3月1日 - ）は、イギリスのドラマーであり、ロックバンド、キング・クリムゾンの創設メンバーの一人としてその名を知られています。ローリング・ストーン誌の「歴史上最も偉大な100人のドラマー」では49位に選ばれるなど、その才能は高く評価されています。

初期の足跡：ボーンマスからプロの世界へ

ドーセット最大の都市、ボーンマスの郊外で育ったジャイルズは、10代の頃からドラマーとしての活動を開始。1961年11月には、ザ・ダウランド・ブラザーズのバックバンドに、ベーシストである弟のピーター・ジャイルズと共に参加し、初のレコーディングを経験しました。1964年にはプロ活動に専念するため、兄弟揃ってビート・バンド、トレンドセッターズ・リミテッドに加入。シングル制作や、当時人気歌手のイギリス公演でのバック演奏など、数多くの経験を積みました。

ジャイルズ・ジャイルズ&フリップ、そしてキング・クリムゾン結成へ

1960年代後半、イギリスの音楽シーンはビート・バンドからアート・ロックへと移行。1967年春、ジャイルズ兄弟はトレンドセッターズ・リミテッド（後のザ・ブレイン）を脱退。歌えるオルガニストを新聞広告で募集するも、最終的にはドーセット出身の歌えないギタリスト、ロバート・フリップを迎え、同年8月にジャイルズ・ジャイルズ&フリップ（GG&F）を結成しました。

GG&Fは1968年9月13日にアルバム『チアフル・インサニティ・オブ・ジャイルズ・ジャイルズ&フリップ』を発表。その後、イアン・マクドナルド（サクソフォーン、フルート、キーボード）、そして脱退した弟ピーターの後任としてグレッグ・レイク（ベース・ギター、ボーカル）を迎え、1969年1月22日にキング・クリムゾンとして再出発しました。さらに、マクドナルドの楽曲の作詞を担当していたピート・シンフィールドがメンバーに加わり、同年10月にはデビュー・アルバム『クリムゾン・キングの宮殿』が発表され、プログレッシブロックの歴史に名を刻むことになります。

キング・クリムゾン脱退、そしてマクドナルドとの共作

しかし、『クリムゾン・キングの宮殿』発表直後のアメリカ・ツアー中、ジャイルズとマクドナルドはリーダーのフリップとの間に溝を深めていきます。ツアーの過酷な日程による心身の疲労、そしてプライベートの問題も重なり、二人は同年12月に脱退を表明。オリジナル・メンバーによるキング・クリムゾンは、わずか1枚のアルバムを残して終焉を迎えました。

1970年、ジャイルズはフリップの依頼でキング・クリムゾンのセカンド・アルバム『ポセイドンのめざめ』に客演。その後、マクドナルドとの共作アルバム『マクドナルド・アンド・ジャイルズ』を制作し、1971年1月に発表しました。弟のピーターも全面参加した本作は、一部の評論家から高い評価を得ましたが、商業的な成功には至りませんでした。

セッション・ドラマーとしての活動

『マクドナルド・アンド・ジャイルズ』の後、ジャイルズはセッション・ミュージシャンとして活動。ジャクソン・ハイツ、ケヴィン・エアーズ、ロジャー・チャップマンとチャーリー・ホイットニーによるストリートウォーカーズなどの作品に参加した他、ロジャー・グローヴァー、アンソニー・フィリップス、グラハム・ボネット、レオ・セイヤー、ペンギン・カフェ・オーケストラ、ブライアン・フェリー、グレッグ・レイクなど、数多くのアーティストの作品に参加しました。

1978年には、弟のピーター、デイヴ・マクレエ、ジョン・G・ペリーらを迎えてソロ作品を録音。この作品は25年後の2002年に、ソロ・アルバム『プログレス』として日の目を見ることになります。

21世紀の活動：スキッツォイド・バンドとソロ活動

1999年には、イアン・マクドナルドの初のソロ・アルバム『ドライヴァーズ・アイズ』の制作に参加。2002年には、マクドナルドと共同で『マクドナルド・アンド・ジャイルズ』のリマスター作業を行いました。そして、マクドナルド、弟ピーター、メル・コリンズ、ジャッコ・ジャクジクと共に「21stセンチュリー・スキッツォイド・バンド」を結成。キング・クリムゾンの初期サウンドを彷彿とさせる演奏活動を行いましたが、2002年の日本公演後に脱退しました。

2008年には、Adrian Chivers、Daniel Pennieと「マイケル・ジャイルズ・マッド・バンド」を結成。過去のクリムゾン・サウンドとは一線を画するアヴァンギャルドな作風を展開し、スタジオ・アルバムやライブ・アルバムを発表しました。

2019年時点では、心理学に関する書籍の執筆に取り組んでいました。

マイケル・ジャイルズの音楽的探求は、キング・クリムゾンの創設からソロ活動に至るまで、常に革新的なものでした。彼のドラム演奏は、プログレッシブ・ロックの歴史において重要な位置を占めています。

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