アンドレア・トゥルー

アメリカ合衆国のパフォーマー、アンドレア・トゥルー（本名：アンドレア・マリー・トゥルーデン）は、歌手そしてポルノ女優として活動した異色のキャリアを持つ人物です。1943年7月26日にテネシー州ナッシュビルで生まれた彼女は、特に1976年に「アンドレア・トゥルー・コネクション」名義で発表し世界的な成功を収めたディスコソング「モア・モア・モア」で広く知られています。

彼女の人生は、多様な経験に彩られています。ナッシュビルでの厳格なカトリック系寄宿学校での少女時代を経て、1968年には映画スターになるという大きな夢を抱き、ニューヨークへと渡ります。しかし、俳優としての成功は容易ではなく、厳しい現実の中で、彼女はポルノ映画の世界へと足を踏み入れることになります。1972年から1976年にかけて、彼女は50本以上の作品に出演し、この期間が彼女のキャリアの一部を形成しました。

そして、彼女の人生の転機となる出来事が起こります。1975年、仕事でジャマイカを訪れたアンドレアは、現地の不動産会社のコマーシャルに出演しました。しかし、当時のジャマイカでは、アメリカからの経済制裁に対する報復措置として、国外への外貨持ち出しが厳しく制限されており、彼女はギャラを現金で持ち帰ることができないという思わぬトラブルに見舞われます。この窮地において、アンドレアはひらめきました。現金はだめでも、レコーディングされたマスターテープであれば持ち帰ることが可能なのではないか、と。すぐに友人で音楽プロデューサーのグレッグ・ダイアモンドに連絡を取り、事態を説明しました。

グレッグ・ダイアモンドはこの状況をチャンスと捉え、すぐに「モア・モア・モア」の原曲を書き上げました。彼はまずニューヨークで楽器演奏部分（インストゥルメンタル）を録音し、そのテープを手にジャマイカへと向かいました。現地でアンドレアとともに歌詞を完成させ、現地のミュージシャンたちの演奏を加えてトラックを重ね、楽曲の編曲とレコーディング作業を急ピッチで進めました。こうして完成したマスターテープを、アンドレアとグレッグは無事アメリカに持ち帰ることに成功します。このテープは、当時のディスコシーンで絶大な影響力を持っていたミキシング・エンジニア、「ディスコ・ミックスのカリスマ」とも称されたトム・モールトンの目に留まります。トム・モールトンによって独特のグルーヴを持つミックスが施され、特にディスコでかけるのに最適な12インチシングル盤として完成しました。1976年1月にリリースされた「モア・モア・モア」は、瞬く間に人気に火がつき、全米ポップ・チャートで最高位4位を記録するなど、世界的なディスコヒットとなりました。そのキャッチーなメロディーとリズムは時代を超えて愛され、サマンサ・フォックスやバナナラマ、レイチェル・スティーヴンス、ダニー・ミノーグなど、多くのアーティストによってカバーされ続けています。

「モア・モア・モア」の成功はアンドレアを歌手としてスターダムに押し上げましたが、その活動は長くは続きませんでした。3枚目のアルバムを発表した後、彼女は喉に腫瘍が見つかり、手術を受けますが、残念ながら完治せず歌手活動の継続を断念せざるを得なくなります。その後、彼女はニューヨークを離れ、フロリダ州に移住しました。歌手としてのキャリアを終えた後は、占星術を学んだり、薬物依存症のカウンセリングに携わるなど、人々の精神的なケアに関わる活動を行っていました。そして、2011年11月7日、ニューヨーク州キングストンの病院で、満68歳でその生涯を閉じました。

多才でありながらも波乱のキャリアを歩んだアンドレア・トゥルー。ポルノ女優から一転、ディスコの女王として輝き、病により歌手活動を断念した後も新たな分野で活動を続けた彼女の人生は、「モア・モア・モア」という不朽のディスコアンセムとともに記憶されています。

ディスコグラフィー

More, More, More (1976年)
White Witch (1977年)
* War Machiney (1980年)

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