アンドレイ・グリアゼフ

アンドレイ・グリアゼフ：才能と苦悩の軌跡

アンドレイ・ヴラジーミロヴィチ・グリアゼフは、1985年7月26日、ロシアのペルミに生まれました。4歳でスケートを始め、11歳でサンクトペテルブルクに移り、名コーチ、アレクセイ・ミーシンの指導を受けます。ミーシン門下では、後に兄弟子となるアレクセイ・ヤグディンや、憧れの存在だったアレクセイ・ウルマノフらと切磋琢磨しました。ウルマノフからはアパートを提供されるなど、温かいサポートを受けていたようです。

ジュニア時代はISUジュニアグランプリで活躍し、2001-2002シーズンには2連勝を飾るなど頭角を現します。しかし、世界ジュニア選手権では不本意な結果に終わり、一時的にリンクから離れる時期もありました。その後、ヤグディンの勧めでタチアナ・タラソワのもとへ移籍。転機となった2003-2004シーズンには、世界ジュニア選手権で優勝を掴み取ります。

2004-2005シーズンからシニアに参戦。2006-2007シーズンにはロシア選手権で優勝し、旧採点システム最後の世界ジュニアチャンピオン、そして新採点システム最初のロシアチャンピオンという、歴史的な称号を獲得しました。持ち前のトリプルアクセルの質の高さは、織田信成選手も高く評価していたと伝えられています。

グリアゼフのジャンプ技術は、最初のコーチであるアンドレイ・キスルキン氏からの指導、そしてミーシン氏のもとでの鍛錬によって磨かれたものです。14歳でトリプルアクセルを習得し、シニア時代には4回転トゥループにも挑戦。ヤグディンからもジャンプ指導を受けた時期もありました。しかし、怪我の影響もあり、後に4回転はプログラムから外すことになります。スケーティングスキル、ステップなどは、タラソワ氏のアシスタントコーチだったエフゲニー・プラトフ氏やマイヤ・ウソワ氏らから指導を受け、洗練されていきました。

グリアゼフは、ヤグディンとは特に親密な関係を築き、ヤグディンはグリアゼフのコーチとして、ISUジュニアグランプリにも帯同した時期もあります。一方、エフゲニー・プルシェンコとは不仲であったことを公言しており、複雑な人間関係も垣間見えます。また、ジュニア時代の趣味は読書、音楽鑑賞、そして木彫りだったと伝えられていますが、渡米後はコンピュータゲームに変わっているようです。

ロシアチャンピオンになったグリアゼフは、ロシア国内のジャンプ偏重主義を批判し、日本や北米の選手のように、ジャンプとスケーティングが調和した演技の重要性を訴えました。2007年のNHK杯では、コーチの不在で困っていたポーランドのペア選手をサポートするなど、温かい人柄も垣間見せています。

2009年に怪我のため現役を引退。その後はCSKAモスクワでコーチを務めた後、ロシア国外のアイスショーに出演。2016年以降はロシアに帰国しています。

アンドレイ・グリアゼフのキャリアは、才能と努力、そして周囲の人々との出会いと別れによって彩られた、ドラマチックなものでした。世界ジュニア選手権優勝、ロシア選手権優勝という偉業は、彼の才能と並々ならぬ努力の証です。しかし、怪我との戦い、そしてジャンプ偏重主義への批判など、彼の歩みには多くの困難と葛藤があったことも事実でしょう。彼の物語は、フィギュアスケート選手としての成功だけでなく、人間としての成長も物語る、感動的なものです。

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