アンドレ・シトロエン公園

パリ南西部、セーヌ川左岸に広がるアンドレ・シトロエン公園は、約14ヘクタールの敷地を持つ広大な公共庭園です。1992年に開園したこの公園は、かつて自動車メーカー、シトロエンの工場が稼働していた歴史的な場所であり、その創業者アンドレ・シトロエン氏の名を冠しています。パリの都市再構築計画の一環として整備され、周辺の近代的な街並みと調和する開かれた空間を提供しています。開園当時、パリではおよそ一世紀ぶりに誕生した公園の中で、特に大規模なものとして注目されました。

公園はパリ15区に位置し、地下鉄10号線（ジャヴェル＝アンドレ・シトロエン駅）、8号線（ルールメル駅、バラール駅）、RER C線（ポン・デュ・ガリリアーノ駅、ジャヴェル駅）、T3a路面電車、RATPバスなど、様々な公共交通機関でアクセス可能です。

アンドレ・シトロエン公園の敷地は、1915年から1970年代まで稼働していたシトロエンの工場跡地です。広大な未利用地となった後、パリの都市計画に基づき公園として再開発されることとなり、1986年に着工、1992年に完成しました。公園の整備と並行して、周辺には住宅やオフィスビルなども建設されました。

公園の設計は、ランドスケープデザイナーのジル・クレマン氏とアラン・プロヴォ氏を中心に、建築家らが協力して行われました。敷地は対角線状の園路で東西に分かれ、それぞれのエリアを別のチームが担当するユニークな手法が採用されています。中央部には広大な芝生広場が広がり、そこからセーヌ川に向かって緩やかに傾斜しています。セーヌ川に直接面している点が特徴で、水辺の景観が巧みに取り込まれています。

公園の北東端には、ガラス張りの大きな温室が二棟あり、一つは植物展示用、もう一つはイベント用のホールとなっています。これらの間には水の広場が配されています。南端には「変容の庭」と呼ばれる運河と反射池があります。公園の北側には、異なるテーマを持つ6つの「直列庭園」や、野生草が植えられた「移動庭園」が設けられています。中央の芝生を取り囲むように配置された庭園には、《黒い庭》や《繁茂する庭》など、個性的で多様なデザインを楽しむことができます。

特に人気が高いのは《繁茂する庭》です。ここでは、野生的な植物があえて生い茂るように維持されており、設計者ジル・クレマン氏による「野生の庭」のコンセプトが表現されています。庭師によって細心の注意を払って管理されており、都市の中にありながら自然の力強さを感じさせる空間として、多くの人々がこの庭園のベンチで憩います。公園内には約800メートルの直線園路があり、水辺、芝生、竹林など、多様な景観の変化を楽しみながら散策できます。

公園では様々なレクリエーションが可能です。北側には、惑星や色などをテーマにした「シリアルガーデン」があります。公園のシンボルの一つが、巨大な係留気球「Ballon Generali」です。気象条件が良ければ、この気球は最高300メートルまで上昇し、最大30人が約10分間の遊覧を楽しめます。気球からは、エッフェル塔やセーヌ川など、パリ市内の主要なランドマークを一望することができます。この気球の照明の色は、パリの大気汚染の度合いを示しています。

広大な敷地を持つ公園の維持管理は重要であり、一部施設の状況について言及された報告もあります。

アンドレ・シトロエン公園は、産業遺産を革新的な公共空間へと再生させた成功例であり、多様な庭園デザインやユニークなアトラクションによって、パリにおける現代的な都市公園のモデルとして多くの人々に親しまれています。

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