温室

温室（おんしつ）

温室は、特に農業や植物学で重要な役割を果たす施設です。この構造物は、透明なガラスやプラスチックフィルムで作られ、内部の温度を一定に保つことができるように設計されています。温室は農家や植物園で主に使用され、温暖な地域の植物を育てたり、展示したりするための環境を提供します。日本では、木や障子紙で作られた容器のことを暖室（おかむろ）や唐室（とうむろ）と呼び、これも温室の一種と見なされることがあります。

歴史的背景

温室の歴史は古く、前漢の元帝の時代（紀元前33年頃）には、庭で季節外れの野菜を育てるための燃料削減の提案がありました。日本には、明から伝来した唐室が慶長年間に改良されて利用され始めました。

欧州に目を向けると、紀元前1世紀のローマ皇帝ティベリウスがアルメニアキュウリを育てるために工夫を凝らした様子が記録に残っています。著名な自然学者プリニウスは、きゅうりの苗を太陽の光が当たる場所と、温められた家の中とを行き来させたことを記述しています。17世紀以降、ガラス製品の生産技術が向上し、貴族階級の間で熱帯果物や野菜を育てるためのオランジェリーやウィンターガーデンの設置が流行しました。

これらの作品が有名なのは、世界遺産にも登録されているイギリスのキューガーデンやベルギーのラーケン王宮温室、フランスのベルサイユ・オランジェリーなどです。それ以降、植物学者がいる大学にも温室が設立されるようになり、1681年にはチェルシー薬草園に初めての温室が完成しました。

日本における温室の発展

日本では、温室の試みが慶長年間に静岡県の三保で始まったことが知られています。1700年代には江戸近郊の砂村で幼苗を紙で覆って育てる技術が記録されています。1870年には東京の開拓使官園に最初のガラス製温室が設置され、以降は福羽逸人による革新的な技術が普及しました。20世紀中頃からはビニールを使用する試みが行われ、モダンなビニールハウスが実用化されました。

温室の種類と構造

温室には、様々な素材と形状があります。一般的には、ガラス室、アクリル温室、ビニールハウスがあり、形状もパイプ型やリッチェル型、フェンロ型など多岐にわたります。その中でも、唐室（hotbox）と呼ばれる江戸時代特有の箱型温室もあり、開閉する天井部が障子紙で作られているという特徴があります。

農業用温室は、強固な鋼材で構成され、外にガラスを被覆した構造を持ち、さまざまなサイズや型式があります。特にフェンロータイプはノコギリの刃のような屋根を持ち、効率的な光の採取が可能です。

植物園の機能

日本では、東京の開拓使農園が初のガラス製温室であり、今でも残っている温室としては東山動植物園のものが重要文化財に指定されています。多くの植物園では、熱帯地方や乾燥地特有の植物を温室で育てており、さらにはテーマパークのように昆虫や爬虫類の展示も行う施設も存在します。

まとめ

温室は、農業や植物研究の分野で欠かせない存在となっています。時代を超えた発展と様々な試みにより、現在の技術が確立され、さらに多くの利用方法が模索されているのです。

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