アンドロメダを解放するペルセウス (ルーベンス、エルミタージュ美術館)

ピーテル・パウル・ルーベンス『アンドロメダを解放するペルセウス』



『アンドロメダを解放するペルセウス』（または『ペルセウスとアンドロメダ』）は、バロック期の巨匠ピーテル・パウル・ルーベンスが1622年頃に制作した油彩画です。この作品は、ギリシャ神話の英雄ペルセウスが、海の怪物ケートスからアンドロメダを救い出す場面を描いています。

作品の背景



この絵画の構図は、ルーベンスが以前に描いた同主題の作品（ベルリン絵画館所蔵）と類似性が見られます。本作は、ルーベンスの死まで彼の家に飾られていたと考えられています。1684年のエングレービングには、ルーベンスの家の2階の窓から本作が見える様子が描かれています。その後、1769年にハインリヒ・フォン・ブリュールのコレクションから購入され、現在はサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館に所蔵されています。美術館のルーベンス・ホールで鑑賞することができます。

作品の詳細



オウィディウスの『変身物語』によれば、美しいエチオピアの王女アンドロメダは、海の怪物ケートスへの生贄として岩に繋がれていました。そこへ英雄ペルセウスが現れ、怪物から彼女を救い出します。ルーベンスはこの神話を、独自の解釈で劇的に描いています。

画面中央には、ペルセウスが3人のプット（幼い天使）に囲まれています。一人は、ペルセウスが首を切り落としたメドゥーサの顔が映る盾を持ち、もう一人はペルセウスの兜を、そして残りの一人はメドゥーサの血から生まれた有翼の馬ペガサスを抑えています。画面上部には、勝利の女神ヴィクトリアがペルセウスに王冠を授けています。画面左側では、2人のプットがアンドロメダを繋ぐ鎖を解き放っています。画面下部には、ペルセウスに退治されたケートスの姿が描かれています。ルーベンスはこれらの要素を巧みに配置し、躍動感あふれる構図を作り上げています。

ペルセウスの背後には、ペガサス、ヴィクトリア、プットたちが一列に並び、英雄の凱旋を象徴しているかのようです。逞しい肉体と翻るマントを纏ったペルセウスは、強い生命力を感じさせます。彼はアンドロメダに近づき、彼女の手を取ります。一方、裸体のアンドロメダは感謝の念を抱きつつも、恥じらいの表情で目を伏せています。ルーベンスは、アンドロメダの姿に健康的で官能的なフランドルの女性の美しさを表現しています。

ルーベンスの自由な解釈と卓越した画力により、神話の物語は、人物、ペガサス、ケートスなどがひしめき合う、幻想的な絵画世界として昇華されています。


ルーベンスによる同主題作品



ルーベンスは、この神話を題材に複数の作品を制作しており、それぞれ異なる表現や構図を見ることができます。これにより、ルーベンスがいかにこの物語に魅了されていたかを窺い知ることができます。

参考文献




外部リンク



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