アンナ (曲)

アーサー・アレキサンダーとビートルズが彩る名曲「アンナ (ゴー・トゥ・ヒム)」

1962年、アーサー・アレキサンダーによって世に送り出された「アンナ (ゴー・トゥ・ヒム)」は、その後のビートルズによるカバーで広く知られるようになった楽曲です。アップテンポなリズムとメロディーが魅力的なこの曲は、オリジナルとカバー、双方で異なる魅力を放ち、音楽史にその名を刻んでいます。

オリジナル曲：アーサー・アレキサンダーの繊細な表現

アーサー・アレキサンダーのオリジナルは、1962年9月17日にリリースされました。スローバラードとミドルテンポの中間のような、軽快なリズムが特徴です。音楽評論家からは、その心地よいグルーヴが称賛されており、アレキサンダーのボーカルと、巧みに用いられたシンコペーションも魅力として挙げられています。しかし、商業的な成功は限定的で、ポップチャートでは68位、R&Bチャートで10位という結果に終わりました。この結果は、後述するビートルズによるカバーの成功と対照的なものとなっています。興味深いことに、曲名とは異なり、歌詞では「go to him」ではなく「go with him」と歌われています。

ビートルズによるカバー：永遠の定番への道

ジョン・レノンが気に入っていたこの曲は、ビートルズのレパートリーに早くから加わり、1963年のデビューアルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』に収録されました。ビートルズによるアレンジは、オリジナルを踏襲しながらも、バンド独自の解釈が加えられています。リンゴ・スターのドラムは正確にオリジナルを再現しつつ、独特のグルーヴを生み出しています。しかし、レノンのボーカルは、オリジナルにはない苦悩や情熱が感じられると評されています。特に、ブリッジ部分の高音は、若々しい情熱の爆発とも取れます。また、ビートルズのバックボーカルもオリジナルよりも洗練され、効果的なものとなっています。

レノンのボーカルについては、音楽評論家の間でも異なる意見が見られます。一方は、苦悩や情熱が加わったことで、オリジナルとは異なる魅力が生み出されたと評価し、もう一方は、若々しい情熱を表現したレノンのボーカルに注目しています。どちらの意見も、レノンが「アンナ」を通して独自の解釈を示したという点では一致しています。

ビートルズの「アンナ」は、その後も様々なアルバムやシングルに収録され、世界中で愛される楽曲となりました。アメリカでは『Introducing...The Beatles』や『ジ・アーリー・ビートルズ』に収録されたほか、日本ではシングル『ディジー・ミス・リジー』のB面に収録されるなど、幅広くリリースされています。 さらに、ビートルズのBBCラジオ放送「ポップ・ゴー・ビートルズ」でも演奏された記録も残っています。

レコーディング：スタジオワークとラジオ放送

ビートルズによる「アンナ」のレコーディングは、1963年2月11日にEMIレコーディング・スタジオで行われました。3テイク録音され、最終テイクがマスターテイクとして採用されました。オリジナルのピアノパートは、ジョージ・ハリスンがギターで演奏しています。ビートルズらしい工夫が随所に感じられるレコーディングとなっています。

多様なカバー：時代を超えて愛される魅力

「アンナ (ゴー・トゥ・ヒム)」は、ビートルズ以外にも多くのアーティストによってカバーされています。ハンブル・パイやジョージ・マーティン&ヒズ・オーケストラなど、様々なアーティストが独自の解釈でこの曲を演奏し、その魅力を再発見し続けています。こうしたカバーバージョンの存在は、この曲が持つ普遍的な魅力の証と言えるでしょう。

まとめ：オリジナルとカバーの共存

「アンナ (ゴー・トゥ・ヒム)」は、アーサー・アレキサンダーの繊細な表現と、ビートルズによる情熱的な解釈という、二つの異なる魅力を持つ楽曲です。オリジナルとカバー、どちらも聴き比べてみることで、この曲の奥深さをより一層楽しむことができるでしょう。それぞれのバージョンが持つ個性を比較検討することで、音楽表現の多様性について考えるきっかけとなるはずです。 この曲が時代を超えて愛され続けているのは、その普遍的なメロディーと、アーティストそれぞれの解釈によって生み出される多様な魅力によるところが大きいと言えるでしょう。

もう一度検索