ディジー・ミス・リジー

ディジー・ミス・リジー：ロックンロールの歴史に刻まれた名曲

1958年、ラリー・ウィリアムズによって世に送り出された「ディジー・ミス・リジー」は、ロックンロール史上に燦然と輝く名曲の一つとして知られています。その力強いサウンドとウィリアムズの個性的なボーカルは、多くのアーティストに影響を与え、時代を超えて愛され続けています。本稿では、この楽曲の誕生から、ビートルズによるカバー、そしてその後の歴史的意義までを多角的に考察します。

ラリー・ウィリアムズによるオリジナル

1957年末、ラリー・ウィリアムズは既に大ヒット曲「ボニー・モロニー」を発表していました。勢いに乗るウィリアムズは、翌1958年2月19日、ハリウッドのラジオ・レコーダーズで「ディジー・ミス・リジー」のレコーディングを行いました。

音楽ジャーナリストのジーン・スクラッティは、この楽曲におけるウィリアムズのボーカルを絶賛し、リトル・リチャードの影響から脱却し、独自の強さを獲得したと評しています。彼の力強い歌声は、楽曲に独特のエネルギーと魅力を与えていると言えるでしょう。

スペシャルティ・レコードから7インチと12インチのシングルで発売された「ディジー・ミス・リジー」。B面には、同じ1957年9月11日のセッションで録音された「スロウ・ダウン」が収録されました。「ボニー・モロニー」に続くヒット曲として期待されたこのシングルは、『ビルボード』誌のTop 100 Sidesで最高位69位を記録しました。両楽曲は、1959年に発売されたコンピレーション・アルバム『ヒアズ・ラリー・ウィリアムズ』にも収録されています。

レコーディングに参加したミュージシャンは、ラリー・ウィリアムズ（ボーカル、ピアノ）、アール・パーマー（ドラム）、レナ・ホール（ギター）、ハワード・ロバーツ（ギター）、テッド・ブリンソン（ベース）、プラス・ジョンソン（テナー・サックス）、ジュエル・グラント（バリトン・サックス）といった面々でした。

ビートルズによるカバーと新たな解釈

それから7年後、ビートルズは「ディジー・ミス・リジー」に注目し、カバーすることになります。1965年5月10日、EMIレコーディング・スタジオでレコーディングされたこのカバーバージョンは、アメリカでは『ビートルズ VI』、イギリスでは『ヘルプ！』に収録されました。日本ではシングルカットもされ、「アンナ」がB面として収録されました。

ビートルズによるカバーは、オリジナルとは異なるアレンジと演奏で新たな魅力を生み出しています。しかし、音楽評論家のイアン・マクドナルドは、このカバーバージョンを「無秩序のヒステリーとごちゃごちゃしたダブルトラッキングの見苦しい出来損ない」と酷評しています。これは、ビートルズの演奏スタイルと、オリジナルの持つ雰囲気との違いからくる評価と言えるでしょう。

1965年の全米ツアーではライブでも演奏され、その熱狂的なパフォーマンスの様子は、『ザ・ビートルズ・スーパー・ライヴ！』にも収録されています。さらに、ジョン・レノンは1969年の『トロント・ロックンロール・リヴァイヴァル』でもこの曲を演奏し、その音源はプラスティック・オノ・バンドのアルバム『平和の祈りをこめて』に収録されています。

ビートルズ版の演奏メンバーは、ジョン・レノン（ボーカル、リズムギター、オルガン）、ジョージ・ハリスン（リードギター）、ポール・マッカートニー（ベース）、リンゴ・スター（ドラム）でした。

時代を超えた魅力

スティーヴン・トマス・アールワインが「本物のロックンロールの名曲」と評したように、「ディジー・ミス・リジー」は、その誕生から半世紀以上を経た現在もなお、多くのリスナーを魅了し続けています。オリジナルとカバー両方のバージョンは、ロックンロールの歴史において重要な位置を占めており、そのサウンドと演奏、そして時代背景を理解することで、より深く楽曲の魅力を味わうことができるでしょう。 この楽曲が持つエネルギーと、時代を超えて愛され続ける理由を、今後も多くの人が探求していくことでしょう。

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