アンノン族

アンノン族：日本の観光史を彩った女性たちの旅

1970年代中期から1980年代にかけて、日本の旅行業界に大きな変化をもたらした「アンノン族」という現象をご存知でしょうか？ 当時、多くの若い女性たちが、流行のファッション[[雑誌]]を片手に、一人で、あるいは少人数で旅行を楽しむという新しいスタイルが生まれました。これは、それまでの団体旅行が主流だった日本の旅行スタイルに一石を投じ、女性客が旅行の主役となる最初の契機となったと言えるでしょう。

アンノン族とは？

アンノン族とは、主に1955年から1964年生まれの女性たちを指します。彼女たちは、当時人気を博していた女性向けファッション誌『an・an』と『non-no』の影響を大きく受けました。これらの雑誌は、美しい写真と魅力的な旅行記事を掲載しており、若い女性たちの旅行意欲を刺激しました。雑誌に掲載された場所へ、多くの女性たちが押し寄せたことから、「アンノン族」と呼ばれるようになったのです。2023年現在では、59歳から69歳となっています。

アンノン族出現の背景：時代と社会の変化

アンノン族の出現には、いくつかの背景が考えられます。

まず、それまでの日本の旅行スタイルは、団体旅行が中心でした。新婚[[旅行]]や会社の慰安旅行といった男性中心の旅行、修学[[旅行]]や家族旅行などが一般的で、未婚の若い女性が一人で旅行することは非常に稀でした。

しかし、1970年の大阪万国博覧会を契機に、個人旅行が徐々に定着し始めます。万博の成功を受けて、国鉄は「ディスカバー・ジャパンキャンペーン」を開始し、個人旅行の需要喚起に力を入れていました。

さらに、モータリゼーションの進展や飛行機の普及など、交通手段の多様化も背景の一つと言えるでしょう。それでも、当時の若い女性にとって、自動車の運転はまだ一般的ではなく、飛行機は高価な移動手段でした。そのため、国鉄を利用した国内旅行がアンノン族の主要な旅行手段となりました。

アンノン族の旅行スタイル：新たな価値観

アンノン族の旅行スタイルは、従来の旅行スタイルとは大きく異なっていました。彼女たちは、有名な観光地だけでなく、落ち着いた雰囲気の町並みを持つ「小京都」のような場所を訪れ、地域の文化に触れたり、美味しい郷土料理を味わったりと、ゆっくりとした時間を楽しみました。これは、癒しをテーマにした旅行の先駆けと言えるでしょう。

また、彼女たちは旅行において、単に名所旧跡を巡るだけでなく、旅先での体験や時間を重視するようになりました。その影響は大きく、観光地は、女性客を取り込むための街づくりを進めるようになりました。例えば、由布院温泉などは、静かで落ち着いた雰囲気を維持することにより、女性客に人気の温泉街として発展しました。

アンノン族と観光地の変化

アンノン族の人気が高まるにつれ、多くの観光地は彼女たちのニーズに対応した街づくりを推し進めました。小規模な宿場町では、多くの女性客を受け入れるために、工夫を凝らした対応が見られました。

しかし、アンノン族ブームは永遠には続きませんでした。1980年代に入ると、バブル景気の影響もあり、多くのアンノン族が結婚。家族旅行が中心となり、マイカーの利用も増加しました。その後、海外旅行の一般化も、旅行スタイルの変化に拍車をかけました。

現代におけるアンノン族：新たな旅の始まり

子育てが一段落した現代のアンノン族は、再び旅行への関心を高めています。公共交通機関を利用した国内旅行や、女性同士の旅行などを楽しむ姿が見られます。旅行会社やJRなどの鉄道会社も、彼女たちをターゲットにしたキャンペーンを展開するなど、アンノン族世代は日本の観光業界において、依然として重要な存在感を持ち続けています。

まとめ

アンノン族は、単なる旅行ブームではなく、日本の観光業界に大きな変革をもたらした重要な現象でした。彼女たちの旅行スタイルは、日本の観光地のあり方を変え、現代の旅行文化にも大きな影響を与えています。 今後、彼女たちがどのような旅行スタイルを提案し、観光業界を牽引していくのか、注目すべきでしょう。

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