ディスカバー・ジャパン

ディスカバー・ジャパン（DISCOVER JAPAN）

ディスカバー・ジャパンとは、日本国有鉄道（国鉄）が1970年に開始した個人旅行促進キャンペーンである。この取り組みは、個々の旅行者の増加を狙って始まり、特に女性に焦点を当てることで、数多くの日本国民の旅行スタイルを変えることに成功した。キャンペーンの副題は「美しい日本と私」であり、日本の美しさを再発見することをテーマにしている。

背景と経緯

国鉄は1964年に東海道新幹線を完成させ、東京と大阪を結ぶ輸送力を強化し、その後在来線の強化も進めた。さらに1970年には日本万国博覧会が開催され、大規模な観客輸送が実施された。この万博を通じて、多くの日本国民は従来の団体旅行から個人旅行へと移行する機運が高まった。万博終了後、国鉄は旅客確保のため、個人旅行促進キャンペーン「ディスカバー・ジャパン」を始めることを決定した。

キャンペーンの開始

ディスカバー・ジャパンのキャンペーンは、万博の終了直後、1970年10月14日（鉄道の日）から始まった。これまでのキャンペーンは地域に特化していたが、これは全国的に展開され、「日本を発見し、自分自身を再発見する」という理念のもと進められた。

このキャンペーンは、広告代理店の電通によって全面的にプロデュースされ、その副題も同社が考案した。キャンペーン名の初期案は「ディスカバー・マイセルフ」であったが、川端康成の「美しい日本の私」を基にした副題が登場し、彼の協力も得られたことが特徴的である。それにより多くのポスターや広告に使用されて広がった。

宣伝活動の展開

ディスカバー・ジャパンは、鉄道の車両や駅のポスター、テレビ番組など多岐にわたって宣伝活動を展開した。特に、主要30駅には「ディスカバー・ジャパン・タワー」が設置され、注目を集めた。また、全国に1400の駅でスタンプが設置されるなど、地域の観光地を訪れるきっかけを提供した。

テレビでは、国鉄提供による紀行番組『遠くへ行きたい』が放送され、永六輔が日本各地を旅する様子を通して視聴者の旅行願望を刺激した。この番組は多くの人々に愛され、キャンペーンの重要な一環となった。

旅行券の刷新

ディスカバー・ジャパンの開始と同時に、旅行券制度も見直された。それまでの複雑な周遊券に代わり、限られた範囲で短期間利用できる「ミニ周遊券」が設定され、一般の旅行者に利用しやすい形に生まれ変わった。従来のレディメイド版周遊券も「ワイド周遊券」と名称を改め、更なる旅行の便を図った。

社会情勢とキャンペーンの影響

1970年代初頭、国鉄の新幹線網が広がり、特急列車も増発される一方で、全国各地で女性向けの旅行メディアが創刊された。これにより、個人旅行を志向する女性客層が急増し、観光地には女性をターゲットにした施設が整備されるようになった。ディスカバー・ジャパンは、このような社会の潮流に合致して、旅行文化の普及に大きく寄与した。

キャンペーンは1976年まで展開され、その後も様々な後継キャンペーンが実施されたが、実施終了後は国鉄の経営環境が悪化し、大型キャンペーンが減少していく運命にあった。しかし、この取り組みは日本の旅行文化において根強い影響を及ぼし続けている。1984年には「エキゾチック・ジャパン」なる新たなキャンペーンの実施にも結びついた。

現在と未来

現在でも、国鉄や関連企業は「ディスカバー・ジャパン」をモデルにしたキャンペーンを展開している。特にJR西日本の「DISCOVER WEST」など、当時の精神を引き継いだ取り組みも存在する。日本の旅の魅力を再発見する試みは、今もなお続いている。

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