アンビバレンス

アンビバレンスとは

アンビバレンス（ambivalence）という概念は、特定の対象に対し、相反する感情や態度を同時に抱く状態を指します。この用語はドイツ語の「アンビヴァレンツ（Ambivalenz）」に由来しており、心理学や精神分析の分野で特に重要な概念とされています。他にも「両価感情」や「両面価値」と訳されることがありますが、一般的には「アンビバレンス」と呼ばれることが多いです。関連する形容詞には「アンビバレント（ambivalent）」があります。

概要

具体的には、特定の人や物に対して、愛情と憎悪、尊敬と軽蔑といった、異なる感情を同時に抱くことがあげられます。このように情緒が複雑に絡み合うことで、個人は時として深い心理的葛藤に直面することがあります。最初に「アンビバレンス」という用語を用いたのは、オイゲン・ブロイラーであり、彼の理論をジークムント・フロイトが精神分析に取り入れることで、広く知られるようになりました。

心理的影響

アンビバレンスが抱える問題は、一方の感情、特に社会的に望ましくないとされる感情が無意識のうちに抑圧される場合です。抑圧されることで、本人の行動に影響を及ぼし、さまざまな心理的問題を引き起こす可能性があります。これがエスカレートすると、著しい葛藤状態に陥り、神経症の原因ともなり得るのです。

アンビバレンスとスプリッティング

心理学の教科書においては、アンビバレンスとスプリッティング（splitting）が対比されることがあります。スプリッティングとは、対象に対して一つの感情しか持たない状態を指し、「ママが大好きだけど、パパは大嫌い」といった切り分けた感情を持つことを表します。特に幼少期には、このような単純な見方が一般的ですが、成長するにつれ、より複雑な見解を持つようになるとされています。

すなわち、大人になると、私たちは「ママには好きな部分もあれば、嫌いな部分もある」といったように、異なる側面を同時に認識する能力が高まります。また、「パパにも好ましい部分と好ましくない部分がある」と理解するようになります。これがアンビバレンスの状態であり、成熟にともなう対象との関係の新たな認識を示しています。

まとめ

このように、アンビバレンスは私たちの感情や態度にオーセンティックな深さをもたらします。人間の感情は必ずしも単純ではなく、しばしば対立する感情が同居する複雑なものであることを理解することは、自己理解や他者理解の鍵となるでしょう。

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