アンブロジオ聖歌

アンブロジオ聖歌（Ambrosian Chant）

アンブロジオ聖歌は、ラテン語のミサに付随する単旋律の聖歌であり、アンブロシオ聖歌とも呼ばれています。聖アンブロジウスが374年から397年までミラノで大司教を務めていた時期に発展しました。北イタリアのミラノは、東方教会聖歌の影響を色濃く受けた文化的な中心地として知られています。この聖歌は、特に交唱のスタイルであるアンティフォナが特徴的です。しかし、現在に伝わるアンブロジオ聖歌が当時の原形と同じかどうかは不明です。

歴史的背景

聖アンブロジウスに関連する音楽の記録は少なく、歴史的資料からはその全容を知ることは難しいですが、彼の伝記には重要なエピソードがあります。アウグスティヌスによれば、385年にアリウス派が教会を奪取しようとした際、アンブロジウスはユスティナ皇太后に対抗し、信者たちと共に教会に立てこもり、日夜聖歌を歌い続けました。この件に関連し、ハンガリーの音楽研究者であるベンジャミン・ラジェキーは、アンブロジウスが実際にいくつかの賛美歌を作成したとの記録を残しています。アウグスティヌスはその中から四つの詩についても言及しています。

しかし、これらの聖歌が本当にアンブロジウスによって作られたかどうかは、確かな文献が存在しないため、評価が分かれています。アンブロジウス説に対する否定的な考えが広まるたびに、ミラノの聖職者たちは彼の名前を挙げ、地域の聖歌の伝統を守り続けてきました。これにより、古代からの礼拝聖歌が現在に至るまで継承され、保存されてきました。

アンブロジオ聖歌の特徴

この聖歌のメロディには、独特な最高音部と最低音部が織り交ぜられています。禁欲的な単純さと無駄のない旋律が特徴であり、他の聖歌様式では見られない多彩さや豊かさを持っています。アンブロジオ聖歌は、時として「全く秩序がない」と評されることもありますが、これは極端な見解かもしれません。グレゴリオ聖歌が持つ一定の形式や長さの制約は、アンブロジオ聖歌には見られず、むしろ自由で創造力に富んだ旋律が況んでいます。

これらの聖歌は、人間の想像力を刺激し、シンプルな形から複雑な形へと展開するさまざまなフレーズの証拠といえるでしょう。また、当時のミラノが東方と西方の接点であったことを考えると、独特の聖歌が誕生した背景にも納得がいきます。

参考資料

• - CD『アンブロシオ聖歌集』合唱 スコラ・フンガリカ（Schola Hungarica）
• - 発売元：株式会社アルファーエンタープライズ
• - 解説：ベンジャミン・ラジェキー（1901-1989）による日本語解説書

このように、アンブロジオ聖歌は豊かな歴史と独特な音楽的要素を持つ重要な聖歌として現代に受け継がれています。

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